ふゆのまほうつかい

 クロッカスがやわらかい紫の姿を見せたかと思ったら、思わぬ寒波におそわれ突然冬に逆戻り。でも、来週は寒中休みでスキーに行くし、まだ気分は半分以上冬に包まれているというところかな。それなら……と、届いたばかりの『ふゆのまほうつかい (世界の絵本コレクション)』を娘と読む。
 冬の抒情がやさしい言葉でつづられる絵本は、淡い色合いの表紙を見たときから宝物絵本になる予感がした。実際手に取り、鉛筆のモノトーンだけで描かれる雪模様の見返しを目にして、本文を読まずとも予感が的中したことを確信。思ったとおりの絵本!……と感激しながらページをめくる。
 ほとんどのページが、白を背景に鉛筆の輪郭だけで描かれる部分とくすんだ中間色からなる部分からなり、冬の透明感とうれしさを同時に上手く表現している。グレーの文字を先頭に置く言葉の配列と、タイトルの色使いも同様のイメージをかきたてる。表紙タイトルなど、原書『Winter Magic』より雰囲気が出ているのでは。グリーティング・カードなどで見かけるタイプの画風だけれど、言葉と文字にシンプルな工夫が施され、冬の絵本としてすてきな芸術作品になった。
 娘は冒頭、モノトーンの犬と色ページの小鳥(足跡つき)を見て、「かわいい! これ、だ〜いすき!」と言って絵本を抱きしめた。色と空間使いが巧みだから、動物たちの息づかいが伝わってくるのだと思う。
 ただ表紙に貼る宣伝シールは、容易にはがせるものにして欲しいな。絵を楽しみたい者にとり、米コルデコット賞など名誉の証となるシールでも表紙の絵を邪魔する存在は迷惑だったりする。販促用であればさらに。(asukab)

ふゆのまほうつかい (世界の絵本コレクション)

ふゆのまほうつかい (世界の絵本コレクション)