あかがいちばん

 『あかがいちばん』――。こんなにも心に染み入る絵本に出会えるとは。娘と一読して、しばらくうっとりしていた。『Red Is Best』はカナダのロングセラー絵本ということだけど、図書館でも学校でも書店でも目にしたことがなかった。米国で流通していないのだろうと思いきや、アマゾンがしっかり扱っているから知らなかっただけなんだ。でも、出会えてよかった。みぃさんが「読後にぎゅっと抱きしめたい絵本」と書かれていたけれど、それはわたしも同じだった。
 「おかあさんったら あかのこと、なんにも わかってないんだよ」で始まる絵本には、靴下も上着も長靴も、たとえ穴が開いていても手袋だって、大好きな赤にしたい小さな女の子の気持ちが素直に描かれる。赤いコップで飲むとジュースの味が違うなんて、子ども心そのもの。子どもの目の高さと同様にたとえば、赤い上着は寒いから青いのにしなさい、と諭すおかあさんのまなざしも日常そのものである。こういう生活のやりとりは、いつまでも忘れたくない記憶の一片。身近な光景が自分たちの生活と重なり、親子ともども共感の嵐に見まわれる絵本だった。
 ペン画に赤の着色が鮮やかで、「赤が大好き!」という気持ちが踊っている。小さな頃の子どもの姿がすっぽり収まった、大切な大切な1冊。ここで言う「子ども」とは、息子、娘であったり、自分だったりする。(asukab)

あかがいちばん

あかがいちばん