せかいでいちばんつよい国

 『せかいでいちばんつよい国』は、ずっと気になっていた絵本。『ぞうのエルマー〈1〉ぞうのエルマー (ぞうのエルマー (1))』シリーズの作者だし、邦訳タイトルが原書『The Conquerors』にはないインパクトを生み出していて興味をそそられた。
 「むかし、大きな国が ありました。大きな国の 人びとは、じぶんたちの くらしほど すてきなものはないと、かたく しんじていました」――。はあ、なんだか米国そのもの。それで、大きな国の大統領は世界中の人々を幸せにするために、いろんな国へ戦争をしに行く。「われわれが せかいじゅうを せいふくすれば、みんなが われわれと おなじように くらせるのだからな」。大統領が兵隊を携え最後に向かった国は、小さな国。ところが驚くべきことに、この国には兵隊がいなかった。
 読む前から「せかいでいちばんつよい国」=「米国」と決め付けて、その対外政策を風刺した絵本と勝手にイメージしていたけれど、その手のいやらしさはまったくなく、逆にやさしい子守唄が聴こえてくる心あたたまるお話だった。人と向き合うときどんな心を抱けば通じ合えるのか、そんな大切なメッセージを届けてくれる。軽やかな色合いのペン画もいいんだろうなあ。大国VS小国という重いテーマをユーモアと平易さで鋭く描いた、後味の優れた絵本である。
 読後の余韻に浸りたくて「大統領は最後に何をしたんだっけ?」と、くどいのを承知で息子に尋ねると、「歌を歌ったんだよ」。こんな穏やかな気持ちで読み終えられるとは、想像もしていなかった。時代を超えて読み継がれていく名作だと思う。
 昨日は息子の誕生日。義母から贈られたケーキを夕食後にいただく。キャンドルは12歳の因数を選んで4本。それぞれ、健康、知恵、技術、友情(日本語で書くと硬い〜)を願った。息子がオリンピックの様子を見て、「ぼくもオリンピックに行く」と一言。「見に行くの、それとも選手として?」と聞くと「選手。モーグルスノーボードで」とつぶやいたので記しておく。(内心、フリースタイルやスノボーより、ダウンヒルなど歴史の長いアルペンのほうがかっこいいのになあ〜と思いつつ。)4年後は、おとなりのバンクーバーBCで開催。シアトルもオリンピック一色に染まるんだろう。(asukab)

せかいでいちばんつよい国

せかいでいちばんつよい国