おじいさんの小さな庭

 わくわくの書店訪問。手にとり書棚の前で読みふける悦びは、3年ぶりになる。本当なら児童書専門店に足を運びたいのだけど、残念ながらそのような時間的余裕はない。というわけで、このあたりではちょっと歴史のある大型書店へ行ってみた。以前はもっと絵本売り場が広かったのに、今回かなり狭くなっていてがっかりだなあ。新刊が揃っていないなど、選書にも満足がいかなかった。その中で買った1冊が『おじいさんの小さな庭』。バーナデットの中で、以前から目に付けていた絵本だった。
 主人公は、花や鳥が大好きなおじいさん。おじいさんの庭の、なんと芳しいこと。そこには、野ばらやマーガレット、ツリガネソウ……、たくさんの花が咲き乱れている。毎日、花や小鳥に囲まれているのだから、おじいさんには植物や動物の言っていることがみんなわかっていた。ある日、庭で1番小さいヒナギクがとなりの庭へ行きたいとだだをこねた。いつかおじいさんから隣りの庭の話を聞いて以来、ずっと行ってみたいと願っていたのだった。心やさしいおじいさんは、ヒナギクの願いをかなえてあげた。
 表紙の美しさにうっとりして、見返し、中表紙と進めるにつれ、手に入れてよかった……としみじみする。そうそう、おじいさんの姿は、まるで父。庭に出て花に囲まれていさえすれば幸せという人なので、遠方で父を思い出す意味でも大切な絵本になると思った。
 バーナデットのイラストは、わかっているとはいえ、やはり夢見心地。ほんのり香りの伝わってきそうな色合いに、ぽーっとする。草花の吐息と鳥の歌声に酔いしれてしまう。(asukab)

おじいさんの小さな庭

おじいさんの小さな庭