みるなのくら

 春らしい日が続いたかと思ったら、今朝は雪。磨りガラスの向こうで斜めに舞う雪片を目にし、唖然としてしまった。なんという寒い朝。春の縁側から一気に冬の小部屋に逆戻りだった。思い起こしたのは、この作品! こたつで丸くなりながら、娘、母といっしょに『みるなのくら (日本傑作絵本シリーズ)』を読んだ。
 鶯の美しい声に引かれ、山中で迷ってしまった若者がたどり着いた家には十二の蔵があった。若者はきれいな姉さまから留守番を頼まれ、一から十一までの蔵は見てもいいが、十二の蔵だけは絶対開いてはいけないと告げられる。
 一の蔵は正月、二の蔵は節分、三の蔵は桃の節句……。蔵の戸を開いていくたびに四季折々の祭事の光景が見え、それはまるで幽玄な屏風絵の世界である。子どもの頃、この民話の影響で季節感あふれる情景に魅せられ、一月から十二月という箱詰めのように、きちんとしていて彩色豊かな「暦」の存在に夢中になった。
 「昨日が春で、今日が冬」という朝に、この民話が読めてよかった。若者が見たような季節の姿が、現実に目の前で楽しめた。
 赤羽末吉さんの味わい深い日本画が美しい。(asukab)

みるなのくら (日本傑作絵本シリーズ)

みるなのくら (日本傑作絵本シリーズ)