ホロコーストを伝える刺繍絵本

 ホロコーストを伝える書物は数多くあれど、体験を刺繍にたくした絵本は初めて見た。『Memories of Survival』(邦訳『母からの伝言―刺しゅう画に込めた思い』)は、ポーランド生まれのユダヤエスター・N・クリニッツさん(1927−2000)が少女時代のホロコースト体験を36枚の刺繍絵に託した絵本である。少女エスターが村に起きた史実を作品1枚ごとに書きつづり、彼女の娘さんが背景について解説を入れている。
 逃亡のため両親と離れ離れになり、命からがら妹と共に生き延びた生涯は、一筋縄では理解できないことだろう。刺繍の一針一針に込められた気持ちを思うと、家族の絆やゲシュタポの卑劣さがイメージとして浮かび、悲しくなったり暗くなったり。でも、作品自体は素朴さと温もりに包まれ、昔も今も同じ時間の中に佇んでいるように見える。
 ホロコースト学習の導入として、最適な1冊ではないかと思った。(asukab)

母からの伝言―刺しゅう画に込めた思い

母からの伝言―刺しゅう画に込めた思い

  • 作者: エスター・ニセンタールクリニッツ,バニーススタインハート,Esther Nisenthal Krinitz,Bernice Steinhardt,片岡しのぶ
  • 出版社/メーカー: 光村教育図書
  • 発売日: 2007/01/01
  • メディア: 大型本
  • クリック: 6回
  • この商品を含むブログ (2件) を見る