ふわふわしっぽと小さな金のくつ

 イースターに読んだ絵本は『ふわふわしっぽと小さな金のくつ』(原書『The Country Bunny and the Little Gold Shoes (Sandpiper Books)』)。1939年初版とあり、米国のイースター定番絵本。イースター・バニーの存在は、この絵本から広まったのかなとも思う。
 イースターの前日、子どもたちにきれいな卵を配るのは、卵宮殿の長老さまに選ばれたイースター・バニーと呼ばれるうさぎ5匹。たった半日のうちに世界中を回るのだから、このうさぎたちは足が速くて、賢く、心がやさしくなければならない。彼らが年を取り速く走れなくなると、長老うさぎは世界中のうさぎを集め、その中からかわりのうさぎを選ぶ。田舎に住むうさぎのふわふわしっぽもイースター・バニーに憧れていたが、「おまえはいなかにいて、にんじんでも食ってればいいのさ」と長い足でビュンビュン走る白うさぎや野うさぎに見下されていた。「いまに見てて!」と誓ったふわふわしっぽは大人になり、21匹の子うさぎたちのお母さんになる。子どもたちに家事を教え、立派に家庭を守るふわふわしっぽはある日、長老さまがイースター・バニーを探していることを耳にした。彼女は子どもたちを連れ、ほかのうさぎたちと同じように卵宮殿に見物に出かけた。
 以前読んだときは、良妻賢母称賛で、昔の価値観が押し付けられるような圧迫感を受けた。でも、絵本は読むときの状況や年齢で確かに印象が変わる。今回息子といっしょに読み、そんな気持ちは薄れ、どちらかといえばふわふわしっぽの懸命で真摯な姿に胸打たれ、お話の山場を息を呑んで見守るという感じだった。
 イースター・バニーに選ばれたふわふわしっぽが、困難な任務を受けて険しい雪山を登るところはバーニンガムの『クリスマスのおくりもの』(原書『Harvey Slumfenburger's Christmas Present』)の一場面を想起させ、思わず息子と顔を見合わせる。サンタのおじいさんがロリー・ポリー山に住むハーベイ・スラムヘンバーガーに贈り物を届けたように、ふわふわしっぽも厳しい状況の中、病気の男の子の家に向かうのだった。
 今回、「古い」と感じなかった原因は何だろう。ふわふわしっぽの真剣さだろうか。確かにこういう気持ちに古いも新しいもあるはずがない。「ポギーとべス」の原作・劇化でピューリッツァー賞受賞の作者と知り、作品への興味も深まった。
 娘は教会の卵包み(カラーセロファンでゆで卵を包む作業)を大いに楽しんだらしい。日本の教会祝日は、米国のように「ホリデー=キャンディー(チョコレート)」の図式でないので健全だと思う。復活祭の祝会って、ぽかぽかしていて気持ちがいいんだな。日本ならではの過ごし方だった。うちは前庭でイースターエッグハント。息子が、頂いたチョコレートの卵を茂みに隠し、わたしと主人が捜すという余興で、とても楽しかった。ハッピー・イースター!(asukab)
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ふわふわしっぽと小さな金のくつ

ふわふわしっぽと小さな金のくつ