しあわせって、何だろう?

 冬に読んだチャイルド作品で記録してなかった絵本があったので書いておこう。『Hubert Horatio Bartle Bobton-Trent』は、富裕な家庭に生まれた男の子ヒューバート・ホレイショ・バートル・ボブトン-トレント(非常に英国っぽい名前)君が、幸せとは何かを諭してくれるお話。お札の柄を背景にした表紙の表情が無愛想なので、融通のきかないおぼっちゃまの常識の外れたお話かななどと思っていたのだけれど、まったくの見当違い。分別をわきまえた賢い彼が、真の幸せって何かを教えてくれる心あたたまるファミリー・ストーリーだった。
 とんでもなかったのは、ヒューバートくんのご両親。台所が火の車だというのにパーティばかり開き、執事ら使用人たちのお給料も払えない状況も知らずにいた……。お金の出入りをまったく把握していないから、裕福な生活はいつの間にか貧窮に。でも、ここで考えさせてくれる。お金だけが幸せの源なのかということを。
 世の中、お金が1番の価値観とそうじゃないよの価値観の2つに分かれると思う。前者は競争をして何でも1番になる、自分しか見えない価値観、後者は人生を楽しむ、まわりがすべて見えている価値観に置き換えられるかな。ヒューバート君は子どもながら健気にも、後者の豊かさを読者に示してくれるのだった。(蛇足:競争に勝ち富と名誉を手に入れたら、それを社会に還元すればいいのである。お金を自分だけのものにするか、まわりと共有するか――この選択に日本のエリート教育腐敗の原因がある、と年配の在米日本人のみなさんが嘆いておられた。わたしも密かに同感。)
 めでたし、めでたしの結末が読めてしまうので、そこがちょっと残念だったかな。チャイルドのスタイリッシュなイラストは、いつもながら惚れ惚れといった感じだったけれど。(asukab)
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Hubert Horatio Bartle Bobton-Trent

Hubert Horatio Bartle Bobton-Trent