シスが描いた神童モーツァルト

 お待ちかねの絵本が出た。神童モーツァルトを描いた絵本である。しかも作者は、自身も宇宙的な独自の世界を繰り広げるシス。極めた者が極めた者を描くのだから、共通する感性も多くあったのではと推し量ったりした。
 きょろんとした青い目が愛くるしい『Play, Mozart, Play!』(邦訳『モーツァルトくん、あ・そ・ぼ!』)の表紙を見れば、当たり前のことだがモーツァルトにも無邪気な幼少期があったのだと気付かされる。神童の幼少期がどんなものであったのか。絵本には小さなモーツァルトが実際目にしたかもしれないイメージの世界が、動物や自然とともに躍動感いっぱいに描かれる。
 神童は環境(練習)と内在能力(素質)の相互作用によるものと言われるけれど、彼の場合、その典型なのだろう。そんなに演奏(プレイ)ばかりして、遊ばないの?――と問われるモーツァルト。でも彼は、ちゃんと遊んで(プレイして)いるよと無限に広がる音楽の世界に自らを委ねた。楽しくて仕方がないからもっと演奏し、もっと楽しくなる。なんてすてきな公式だろう。そうなるだけの才能と家庭環境が整っていたからこそ、自然に成り立った。「十で神童、十五で才子、二十歳過ぎれば並の人」――。ほとんどの場合、諺どおりだろうから、神童のまま生涯を終えたモーツァルトがますます驚異に思えた。
 小さな子どもに最適のモーツァルト絵本。おけいこをしているお子ちゃまたちに。(asukab)

Play, Mozart, Play!

Play, Mozart, Play!