ワニのエルンストも出てくるクレヴェン最新作

 最新作『The Wishing Ball』を手にして、エリサ・クレヴェンの魅力を確かめてみた。彼女の絵本は、お話自体起伏のないものでも手にしてページを捲らずにはいられない。理由を探れば、簡単なこと。非常に個人的なことだが、身体感覚に迫るアートが、わたしの内部を刺激してくるからだった。布、リボン、レースのコラージュと水彩で仕上げられる絵には、女の子の柔らかさや煌きが生きている。つまり娘や幼少期の自分や母や祖母がそこにいて、永遠の時の中で、布の手触りや色にときめいたり、リボンの結び方に凝ろうと四苦八苦しているのだった。
 最新作の主人公は、ネリーという野良猫。住む家も友だちもなく、おなかをすかせていた。それを見たカラスが冗談半分で「何でも願いごとのかなう」というボールをネリーの目の前で弾ませた。星の描かれたボールは、それは美しい。ネリーはカラスの言うとおり、星をこすり、3つの願いごと――あったかい おうちに すめますように、ごはんが たべられますように、おともだちが できますように――を唱え、ポーンとボールを弾ませ、つかんだ。さて、願いごとはどうなるか。
 後半に『おたんじょうびのエルンスト』のワニのエルンストが出てくる。これから、ネリーとエルンストシリーズが始まるのかもしれないな。お話は今ひとつ面白みに欠けるけれど、コラージュは楽しく、いつもながら自分もアートしたい気分にさせられた。お友だちを作るハッピーエンドのお話なので、小さな子どもに向く。(asukab)

The Wishing Ball

The Wishing Ball