感謝の聖母、アルタグラーシア

 グアダルーペの聖母(メキシコ)、ファーティマの聖母(ポルトガル)、カリダッドの聖母(キューバ)のように、ラテン諸国にはその土地独自の聖母イメージが存在する。『A Gift of Gracias: The Legend of Altagracia』は、ドミニカ共和国に残るアルタグラーシアの聖母の言い伝えを描く絵本である。
 お話は、スペインから移住してきた少女マリアの一家を描く。やせた土地に作物が育たず貧しい生活を送る中、マリアはある晩、オレンジの種をまく夢を見る。土地の老人キースケイヤから「ありがとう」って言ってごらんと促され、言われたとおり感謝の言葉を口にすると……。次の瞬間あたりにはたわわに実るオレンジの畑が広がり、そこに何百と煌く星のガウンを羽織った感謝の聖母、アルタグラーシアが立っていた。翌日、家族みんなでオレンジの種をまくと、今まで何も実らなかった土地に不思議なことが起きた。
 伝説によると、アルタグラーシアがスペイン植民地である同地に現れたのは16世紀初頭という。ドミニカでは1月21日が聖母の祝日。同じ名前を持つ女の子が多いそうだ。
 表紙にも、中表紙にもオレンジのイラストが描かれ、甘酸っぱい芳香が漂うようだった。祖母の歌集が「柑橘」というタイトルだったこと、またわたしの教名がマリアであることから惹かれた絵本でもあった。(asukab)

A Gift of Gracias: The Legend of Altagracia

A Gift of Gracias: The Legend of Altagracia