人魚ひめ ツヴェルガーの描く海洋世界

 ときにつめたく感情のない海洋世界を描くのにもっとも適した絵画ではないかと思えたほど、ツヴェルガーの『アンデルセンの絵本 人魚ひめ』は透明感があり美しかった。ガラスのようにはかなく透き通った心が示され、読む側は切ないやら、悲しいやら。大人だから冷静に人魚ひめの心情を見つめることができるけれど、一昔前に出会っていたら、かなり深く傷ついていたような気がする。子ども時代を振り返り、やはりわたしには人形実写版の人魚ひめ絵本でよかったのだ、とほっとした。ここには真正面から伝えられると、やりきれないほど清らかでまっすぐな心が描かれているから。
 娘は、胸がはだけた人魚たちを不思議そうに見入っていた。貝殻で覆われていないのだけれど、これもアート形態のひとつなのよね。
 「……人魚ひめは、死んだような気がしませんでした。ひめは自分の心がふわりとかるくなり、あわからぬけだして、しずかに空高くのぼっていくのをかんじました」。なぜか最後に、自分の死に際もこんな感じがいいなと思った。
 娘と取り組んだアートプロジェクト、靴箱シアター(人魚ひめ編)*1が楽しかった。(asukab)
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  • ひんやり海の中を漂いたくなったら

アンデルセンの絵本 人魚ひめ

アンデルセンの絵本 人魚ひめ

*1:靴箱シアター 人魚ひめ asuka's studio アート手帖