Captain's Purr ねこのせんちょう

 終日のたり、のたり風の夏の午後に楽しんでおきたかったな。『Captain's Purr』(邦訳『ねこのせんちょう』)を子どもたちといっしょに読んでの感想。家に一匹、こういうテンポの生き物がいると、日常の流れに余裕が生まれるものだ。眠りほうけて、身だしなみを整え、食べて満たされ、お気に入りの時間を過ごす。猫時間の存在は、前にしか進まない人間の時間を少しばかり巻き戻してくれ、こんな時間もあったのだなと教えてくれる。
 絵本の主人公キャプテン(せんちょう)の黒い模様をチャコール・グレーに変えると、そのままうちの猫タンタンになる。息子が小さな頃にお別れした猫だけれど、機会あるごと今でも思い出話に花が咲く。偶然にも絵本を読む前日、主人がつぶやいた。スクーター(うちの犬)が歳をとったら、また猫を飼おう、と。きっと仲良くやっていけるよ。その頃にはスクーターも、今より大人になっていると思うから。
 絵本のせんちょうはきれいな水彩画で描かれ、猫の魅力をたっぷりとふりまく。うちに再び猫がやってくる日まで(もちろん、それから先も)、のどを鳴らすせんちょうの姿を心行くまで楽しもう。夢を見ているかのような恋物語というのも、お洒落で心にくい。
 読み終え、『Cold Paws, Warm Heart』の作者であることに気づく。こちらのレビューは、また後日に。(asukab)
amazon:Madeleine Floyd

  • 美しい絵がゆっくりと流れていく絵本

ねこのせんちょう

ねこのせんちょう