THEO and the BLUE NOTE セオのブルース
スキー旅行を一日早く切り上げシアトルに戻った理由は、子猫のギャビイにある。窓辺にあったガラスの置物を倒して割った前科があるので、とくに暖炉の上など、家の中をめちゃくちゃに荒らしているのではないかと勝手な想像が頭の中を駆け巡った。お隣さんに世話を頼んできたけれど、食べてウンチして食べてウンチしてを繰り返す成長盛りの子猫のめんどうを五日間もお願いできない。
恐る恐る家のドアを開けると、「ミャア〜」の鳴き声。暗がりから現れた姿はわたしたちの知っている小さなギャビイで、家の中もクリスマスらしい状態のままだった。魔物にはならなかったようで、家族一同ほっ。
タキシードを召したような白黒猫って、かわいいのだ。絵本にもたくさん登場している。たとえば『Theo and the Blue Note』。ジャズと宇宙好きの作者が娘のおやすみ絵本として作ったという絵本は個人的な創作であるのだが、ジャズに乗って色が踊る絵本であること、おまけにセオがギャビイみたいで、たちまちわたしと子どもたちのお気に入りになった。
セオはジャズが好きで、サクソフォンを吹いている。でも、どんなに練習しても出てくる音はブルーな音ばかり。悲しく沈んでいるとクラリネットみたいな宇宙船が着陸して、月に向かってひとっとび。音のない月世界にはアポロという劇場があり、そこには有名なジャズ奏者たちが勢ぞろいしていた!
何しろ気に入ってしまったのが、動物のジャズミュージシャンたち。名前を挙げると……Moles Davis, Billy Goat Holiday, Duck Ellington, Chimp Baker, Charlie Porker, Nat King Cobra, Max Roach, Lionel Hamster, Elephants Gerald……といった面々で、息子がこれに受けて笑い転げる。ブルーな音しか出せなかったセオが活躍する場面もすてきなんだな。色のときめきという感じで、ジャズにぴったりだった。ジャズ+宇宙はちょいと欲張りかなと思ったけれど、演奏場面がかわいくて思わず体が動き出してしまう。そして、セオとギャビイ、おやすみなさい……なのだった。(asukab)
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