Papa and the Pioneer Quilt キルトで語るオレゴンへの旅

 『Papa and the Pioneer Quilt』は浅春の頃、ペンシルバニアを出発しオハイオインディアナミズーリカンザスネブラスカ、ワイオミングを経てオレゴンに向かった家族の半年間を物語る絵本です。途中、弟たちや妹が生まれ、友だちにも出会う中、主人公の少女レベッカは思い出のキルトを作るために、布切れを集め始めました。父さんの破れたシャツ、友だちになったお姉さんと交換したテーブルクロス、親友と別れるときには彼女の帽子の布をもらい、希望の地オレゴンに着いた暁に縫い合わせようと目標を抱き続けます。しかし、過酷な自然に囲まれた道程では、父さんの事故、ロッキー越えなど、つらいこともたくさんありました。
 西部開拓のお話は、同時に北米先住民の住む地への侵略でもあり、事実を知るにつれ憤り以外何も残らないできごとです。この絵本を手にしたときもテーマからほとんど興味が湧かなかったのですが、そんな気持ちをやわらげてくれたのがアクリル材で描かれたイラスト*1でした。水彩の透明感とパステルのやわらかさを持ち合わせた魅力的な画風なのです。ふんわりと素朴に当時の人々の生き様が描かれ、思わず19世紀半ば、オレゴン・トレールの旅に引き込まれました。白抜きページと見開き全景のページが交互に現れ、人々の心情と背景に映る大自然が深く味わえます。
 キルト模様のひとつ"Wandering Feet"(後に"Turkey Tracks")の起こりが巻末に解説されているので、キルト好きな方にぴったりの贈り物と言えるでしょう。(asukab)
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  • 大変な旅であったことも同時に理解できます

Papa and the Pioneer Quilt

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