モーリーのすてきなひ

 季節はずれの絵本レビュー。9月の新学期が始まった頃、学校関連の絵本が並ぶ書店の一角で『Totally Wonderful Miss Plumberry』(邦訳『モーリーのすてきなひ』)を手にしました。イラストがすてきで、以前から読みたいと思っていた絵本です。淡い水彩の描く教室や子どもたちの様子がほのぼのしていて、視覚のぬくもりだけでも心が和んでいきました。でも、お話もとびきりすてきなのです。教室での小さなできごとを、子どもの心理と視点を大切にしながら描いています。
 モーリーがだいじにしている青い石は、遠い所に住んでいるおばあちゃんから贈られたものです。夜は石を眺めて眠るほど、モーリーにとって特別な石でした。その石を友だちに見せてあげようと学校に持っていくと、最初は興味を示してもらえたのに、ラッセルが持ってきた恐竜が登場したとたん、誰も見向きもしなくなりました。おばあちゃんのお話をしようとした矢先に、みんながラッセルの方に走って行ってしまい、モーリーは悲しい思いをします。
 でも、このクラスには、プラムベリー先生というすばらしい先生がいました。この先生の一言を耳にするだけで、人と接するときの心のあり方を諭してもらっているような気持ちに浸れます。
 青い石の美しさが印象に残る、思いやりがいっぱいの絵本でした。赤い小石なら『Sylvester and the Magic Pebble (Aladdin Picture Books)』(邦訳『ロバのシルベスターとまほうのこいし (評論社の児童図書館・絵本の部屋)』)で、青い小石なら絶対にモーリーのお話です。(asukab)
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  • 台湾出身の画家によるイラストは、どことなく日本の絵本を想起させます

モーリーのすてきなひ

モーリーのすてきなひ