10ぴきの いたずらねこ

 教会暦では祝祭日の前に必ず、慎んで待つ期間が置かれている。復活祭の前は大斎節(レント)、降誕祭の前は降臨節アドベント)というように。いずれも慎みの「紫」が象徴の色となり、お祝いの「赤」を静かに待つ日々を送る。
 お祝いの赤。クリスマスの赤。もしかしたらお正月の赤。『10ぴきのいたずらねこ』の赤い表紙を見て、雨に煙る表紙が当地の冬の風情を醸していて、ああ、クリスマスやお正月につながる色だ――と印象を抱いた。中をのぞいて見ると、猫たちがパーティを開いたり、ビールを飲んで酔っ払っちゃったり。やっぱりこれは冬の景色じゃないか。
 10匹の猫から1匹ずつ減っていく数の絵本でもあり、4匹のいたずら猫のページには不思議な和風の趣が漂っている。

4ひきの いたずらねこが
おそばを たべていたよ
いっぴき おなかが いたくなって
のこるは……3びき

 大きな提灯がぶら下がり、「吉田」と書かれた暖簾(?)と煙を吹く富士山もどきの絵の前で猫たちがお蕎麦をすすっているのだ。1匹はカンカン帽なんてかぶっているから、場面は何だか明治・大正期のようにも映る。これは年越し蕎麦かもしれない、と勝手な想像が広がっていく。
 クリスマスを待つ今宵、おめでたい10匹の猫たちにお祝いの「赤」を見せてもらった。オランダの絵本ではあるけれど、ここにはハチベエとか、タスケとか、そんな名前の猫たちが賑やかに暮らしているように思える。年末風景なくして、とっても師走らしく見える絵本。(asukab)
amazon:Mensje Van Keulen
amazon:Jan Jutte

  • 最後からまた最初に戻るので、ぐるぐる話の絵本でもある

10ぴきのいたずらねこ

10ぴきのいたずらねこ

  • 作者: メンシェ・ファンキューレン,ヤンユッテ,Mensje Van Keulen,Jan Jutte,野坂悦子
  • 出版社/メーカー: 朔北社
  • 発売日: 2002/12
  • メディア: 単行本
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