Necks Out for Adventure! はまぐりの冒険

 これまた海の描写が美しい絵本*1。『Necks Out for Adventure: The True Story of Edwin Wiggleskin』は、蛤が主人公という珍しい絵本です。波しぶきをあげるエメラルド・グリーンを見ているだけで、ほれぼれとしてしまいました。きれい。北斎の波うらのような波も出てきます。潮の香りがたっぷりで、春から夏向きの絵本でしょう。
 泥の中に住む蛤たちにとって、首を出すのは食事のときだけ。それ以外は首を引っ込めて隠れ、身の安全を守ることになっていました。でも、その中でエドウィンだけ、「首を出したまま海流にさらわれたらどうなるのかな……」と好奇心を示します。まわりのみんなは笑いましたが、エドウィンのお母さんは「首を長く出して冒険してごらん」と励ましてくれました。さすが。ところがそのとき、恐ろしいことが起こります。人間の足が辺りをかき回したかと思うと、蛤の一団をかきさらっていったのです。エドウィンだけを残して。
 芸術的な背景描写と裏腹に、蛤たちの描写がとってもコミカル。貝という存在が悲哀たっぷりで、そんなギャップも魅力になる愉快な絵本でした。
 海を透明に美しく描く絵本に目がありません。『The Tale of Despereaux: Being the Story of a Mouse, a Princess, Some Soup, And a Spool of Thread [Rough Cut]』の画家*2なので、何となく納得という感じもしました。娘が借りてきてくれたので、感謝。(asukab)
amazon:Timothy Basil Ering

Necks Out for Adventure: The True Story of Edwin Wiggleskin

Necks Out for Adventure: The True Story of Edwin Wiggleskin