The Hinky Pink

 『The Hinky-Pink』は、わがままなお姫さまのドレスを短期間で縫い上げるお針子アナベルのお話。これは、どこかで読んだことがあるような童話。ストーリーテリングでは、人気の演目らしい。
 眠ろうとすると意地悪な妖精が邪魔をして、アナベルはまったく眠れない。睡眠不足でドレスはきれいに縫えないし、時間に迫られる中、どうしたらよいやら途方に暮れていると、この小憎らしい妖精のために心地よいベッドを作ってあげるといいことがわかった。こうして、さまざまなベッドを作ってあげるけれど、どれも満足してもらえない……。
 Judy Moodyシリーズの作者は有能なストーリーテラーでもあるということで、本作品が誕生した。確かに語り口は、軽妙でおもしろい。ダイナミックに読み手を巻き込む勢いが感じられ、読んでいても楽しかった。いろいろなお姫さまが伏線として言及されるところなどは、オリジナルの手法らしい。
 惜しむべくは、イラストだろうか。さらりと描いてしまい、お姫さまカルチャーの味わいが出ていない。舞台はイタリア、フィレンツェ。背景には服飾がたくさん登場するお話でもあるし、うっとりと夢見るようなイラストがついたら、また異なる絵本に仕上がっていただろう。街並みは、実際の建造物を忠実に描写したというが。
 しかし、米国っぽい語りには子どもが親しみやすいこの画風でいいのかも……。男性画家*1より、お姫さまに思い入れのある女性のほうがよかったんじゃないか……とか、非常に個人的な視点から、いろいろ勝手に思いを巡らせた。(asukab)
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The Hinky-Pink

The Hinky-Pink