人形たちのクリスマス

 『人形たちのクリスマス―ターシャ・テューダークラシックコレクション』は、チューダー家の伝統であるお人形たちのクリスマス会を伝える絵本です。何か日本の雛祭りを想起させるお話でした。子どもの背よりも高い大きな人形の家は、さながら絢爛豪華な雛壇でしょうか。ここには背丈30センチほどのお人形セサニーとナイシーが暮らしています。クリスマスには子どもたちの友だちを招き、彼らのお人形やぬいぐるみといっしょにお祝いするのでした。
 米国19世紀の暮らしを描くことの多い作者ですが、この絵本には家の年中行事を紹介するということで1940年-50年代風のクリスマスが描かれます。作中の人形の家は、彼女が7歳のときに母親から贈られたクリスマス・プレゼント。母親特製の人形の家はまるで魔法のように思えたので、シンデレラに登場するかぼちゃの馬車に重ねて「パンプキン・ハウス」と名づけたそうです。なんて幸せな子ども時代でしょう。
 代々大切にされてきたお人形に囲まれて成長し自らが母親になると、今度は本作に描かれる「人形たちのクリスマス」を思いつきます。友だちを招いてマリオネットショーをするクリスマス会は今でも続けられているそうで、お人形に特別な愛情を注ぐ家族の想いが伝わってきました。お人形同士のプレゼント交換が、かわいらしい発想です。 
 豊かな米国の、豊かなクリスマス。お人形を愛する幸せな子どもたちが、幸せなお人形たちといっしょに笑顔を投げかけています。(asukab)
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