かえるごようじん
久々に娘と大爆笑。とびきり愉快なひとときを提供してくれた絵本は、『かえるごようじん』(原書"Beware of the Frog")です。
「あるところに、おばあさんが ひとり おりました。おばあさんは、くらくて ふかくて とんでもなく おそろしい、もりの はずれに すんでいたのです。……」と始まるストーリー。しかし、「暗くて深くてとんでもなく恐ろしい森のはずれ」というわりに、おばあさんはふくよかな笑顔を見せ、真っ赤なお帽子に日傘をさし、赤やピンクのドレスにはレースの飾りがたくさんあしらわれ、なんだかちっとも「恐怖」を感じさせないいでたちです。その一方で、家は蜘蛛の巣だらけの暗くジメジメした印象で、何だか不釣合いな設定。つまり、のっけから、普通ではない雰囲気とともにお話が進むのでした。
さて、森には恐ろしい魔物が住んでいます。でも、おばあさんの味方はたった1匹の小さなかえるだけ。小さなかえるとおばあさんだけで、「なんでも ぬすむ どろぼうゴブリン」「はなつまみトロル」「ひとくいおに」の3匹と、どう向き合うというのでしょう――。
「かえるが不思議な力を持っているはず」と娘が予見したマジカル・パワーは、もちろん驚きとともに炸裂します。読者には思いも寄らない光景と音を発しながら。そして、最後にはこれまた英国風ブラックユーモアをたっぷり効かせた終章が待ち受けているのでした。
魔物たちのひとことに擬音語、擬態語が生き、かえるの行為と合わせて、終始娘は笑いっぱなし。田中パパ、すてきな日本語訳ですね! これは、息子もツボにはまりそうな絵本です。魔物たちの容貌が、彼の好きそうなキャラクターそのものでした。
唐草風の連続模様や装飾が特徴のイラストは、本作品でも健在です。コワおもしろくて、ちょっとくせのある英国の絵本。味をしめてしまったからには、もう止められないでしょう。根底に流れるおとぎ話のエッセンスも、読者を引きつけます。
→and the train goes… のどかで華麗な汽車の旅 - asuka's booktree 絵本手帖
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