Bartleby Speaks! 発語をテーマにした物語

 "Bartleby Speaks!"の主人公は、赤ちゃんのバートルビー。なかなか言葉を発せず、おかあさん、おとうさんをやきもきさせてしまう。――ちょっと脱線して……珍しい名前なので調べてみると、メルヴィルの小説"Bartleby, the Scrivener"(1853年)の主人公とかけた模様。法律事務所の書記をしている、ほとんど口をきかない変人として描かれているみたいだ。
 発語の遅れは、たしかに家族の気をもませる。一方で、おとなしい本人は何にもお構いなし。元気にはつらつと育ち、お医者さんはそのうち話始めるだろうし、気になさるなとアドバイスした。そんな中、4歳のお誕生日を迎えたバートルビー。おじいちゃんもお祝いにかけつけて幸せそうにケーキを目の前にすると、待ちに待った瞬間がやってきた。
 これは実話をもとにした物語ではないかと思えた。音楽家の両親を持ち、音に敏感な家族だけに、無言のバートルビーの姿は常に心配の種として描かれる。親にしてみたら子どもの成長は一大関心事であるし、同情、共感、納得の連続。でも、大きな森全体を見つめて見えてくるものがあるように、子どもの人生を広く大きく見渡すと、「それが何か支障を来たすとでも?」とも思えてくるのである。
 作者は当地在住ということで、親近感を抱きながら読んだ。
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Bartleby Speaks!

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