Tales from Outer Suburbia SF風哲学書……村上春樹ワールドに思えたりも……

 異空間の短編絵本集。15編のショートストーリーが収められた"Tales From Outer Suburbia"を読みはじめ、まったりと不思議な気持ちに浸っていた。暗示は何か、象徴は何か。文章を読み、裏を読もうとするばかりの自分がいる。思考が、ぐるぐる。
 ストーリーだけではない。イラストのほうこそ、極上のアート体験を提供する。実写コラージュ、水彩、油絵風、鉛筆画、素描……複数のアーティスト群によって表された作品なのかと錯覚に陥ってしまうほど、ビジュアル表現が多岐にわたる。
 一等好きな場面は、第二話「エリック」の見開きページ。これは、異国からやってきた小さな留学生のお話だ。そのいでたちは、不思議カワイイ異星人。枯れ葉のような影のような。キッチン棚にホームステイするのだが、彼がここに残していった贈り物がすてきだった。読み進めるうちに、無口で恥ずかしがり屋のエリックが、オーストラリアに多住するであろう見知らぬ土地からの留学生に思えてきた。
 まだ15編ぜんぶを読み終えていないけれど、今のところ文章全体から受ける印象はナントナク村上春樹風な味わい。不思議で、詩的で、哲学的で。1冊あれば、異空間に遊べる異色の短編絵本。
 オーストラリアの絵本。
amazon:Shaun Tan

Tales From Outer Suburbia

Tales From Outer Suburbia