Tomas and the Library Lady トマスと図書館のおねえさん

 "Tomas and the Library Lady"は昨年、娘の教科書で出会ったお話です。たまたま邦訳『トマスと図書館のおねえさん』が最近出たことを知り、昨年のことを振り返ってみようと思いました。
 テキサス州に住むメキシコ移民の少年トマスは夏の間、季節労働として農作業に従事する家族とともにアイオワ州を訪れます。陽射しの強い日中、学校に通わない彼は、冷房のきいた現地の図書館に足を運びました。はじめは涼を取る目的で入った図書館ですが、彼はそこで親切な図書館司書のお姉さんに出会い、言葉の壁を乗り越えて読書のすばらしさを学ぶのでした。恐竜のこと、北米先住民族のこと……今まで知らなかったことがたくさん、本には書いてあります。お姉さんは本を貸し出してくれ、トマスは宿舎に戻りスペイン語に訳しながら両親や祖父ら家族に未知の知識を伝えました。
 トマスと図書館司書との交流が、じんと胸に伝わるお話です。情景描写も美しいのですがやはり、人と人のふれあいが一番熱く迫ってきました。(娘が読解設問に答える傍らで、じわりと目頭が熱くなっていたような……。)
 誰もに感動を与える珠玉の名作なのですから、現役の図書館司書さんたちから熱烈に支持されないはずがありません。昨年、娘の学校では図書司書の先生が先導して、当地のチルドレンズ・シアターにて上演の同名ミュージカルを全校総出で見に行きました。これは昨年の一大学校イベントでした。
 移民少年の読書との出会いをつづる本書は、後にカリフォルニア大学総長を務めたトマス・リベラの少年期回想録でもあります。実話であることの意味も、物語の奥行きを深めているのでしょう。灼熱の陽射しと涼に満たされながら本の魔法に浸るほのかな陰翳が、心地よい余韻として残ります。
http://seattletimes.nwsource.com/html/thearts/2008605685_zart09tomas.html
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トマスと図書館のおねえさん

トマスと図書館のおねえさん