Clever Jack Takes the Cake おいしい、たのしい、ドキドキ、ハラハラ

 手作りケーキをもとにして、いろいろなお話の登場人物が出てきて、暗〜い森やお姫さまの住むお城が舞台になって、"Clever Jack Takes the Cake"は久々に、「次はどうなるのかなあ?」と思い巡る子どもの気持ちになって楽しんだ絵本だった。イラストのくすんだ中間色も夏のきらめきから遠ざかり、紅葉に空気が甘くなり始める秋にぴったりだと思えたし、おいしいケーキが食べたいなあなんていう味覚の秋にも重なっている。(ケーキには摘みたての大きな苺がドンっと乗っているので、季節は初夏なのかもしれないけれど。)
 お姫さまのお誕生会に招待されたジャックは、ケーキを焼いてプレゼントにしようと思い立った。砂糖も小麦粉も卵も牛乳も、貧しいながら工夫してみんな自分で手に入れた。ロウソクだってロウを溶かして作ったし、飾りに使う胡桃の実を拾い、苺も摘みに行った。ところが10本のソウソクを立てたケーキをお城まで運ぶ途中、ジャックはたいへんな目に遭ってしまう。24羽の黒い鳥に襲われて砕いた胡桃をまぶして飾った「おたんじょうび おめでとう、おひめさま」の文字がついばまれてしまい、橋を渡るときには不気味なトロルにケーキを半分取られてしまい……。暗い森を通り抜ける際はあまりにも真っ暗なためにロウソクに火を灯さざるを得なかったし……。
 あまりの困難に、読んでいるほうはハラハラ、ドキドキ。えっ、これでいいの!? だって最後には門番にたった一つ残っていた苺を食べられてしまって……。読みながら「これはPredictionの授業にぴったりの題材!」と思いながら、自分の予想は途中でことごとく裏切られていた。もちろん最後はめでたしめでたしなので、「なあるほど〜」なんだけれどね。
 そうだなあ、ジプシーのクマ一座の存在が摩訶不思議だったことと、ジャックの話に耳を傾ける際のお姫さまの表情がいまひとつ(ポッと驚きを示すような表情が個人的には好き)……と感じた以外は、すごくすてきな絵本じゃないの! 久しぶりに、秋の夜長にぴたりと寄り添える絵本に出会えた。
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Clever Jack Takes the Cake

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