It's a Book インターネット時代の幕開けに

 昨日に続き、書店の袋に入れっぱなしになっていた絵本。
 レーン・スミスさんがまた、やってくれた! と喜び勇んで手にした"It's a Book"は、インターネット時代の幕開けを皮肉るに相応しい傑作である。情報革命はもちろん90年代中ごろに黎明期を迎えていたわけだけれど、今ほどコンピュータが根底から暮らしを支える時代はいまだかつてなかった。紙の本よりコンピュータに親しむ時間のほうが長い……と断言はできないけれど、そういう子どもたちがいてもおかしくないほど、コンピュータの存在は大きくなっている。そんな背景を踏まえて生まれたこの絵本には、冒頭からぐいぐい引き込まれてしまった。
 夢中になって読書しているサルくんの前に現れたのはロバくん。サルくんの手にしているものに興味を抱き、質問を投げかける。「手に持っているものなに?」「どうやってスクロール・ダウンするの?」「それでブログできる?」「マウスはどこにあるの?」「キャラクターで遊べる?」「テキストできる?」「ツイートは?」「Wi-Fiはある?」「こんな風に『音』はだせるの?」――質問攻めにあうたびに、サルくんは「これは本」と答えるのだが、ロバくんはどうやら「本」が何なのかまったく知らないようだ。そこでサルくんが本を手渡して見せてあげると……。
 本を読まずにコンピュータで育つと、冗談ではなく、ほんとうにロバくんのような子どもが登場するかもしれない。一抹の危機感を覚えながら、苦笑とともに読んだ。紙の無駄を削減させるとは言っても、本の存在を知らない生活は御免こうむりたい。間と余白を巧みに利用した会話、イラストがおもしろい。「マウス」にかけて、ネズミくんもちょこっと出演中。
 今年度からコンピュータ・ラボで算数専科になった主人に贈ろうかな。ハロウィンのトリートとして。……ということで一緒に読んでみたところ、ロバが「ドンキー」ではなくて「ジャッカス」である点が気になる、との感想。そういえばわたしも何となく感じていたのだ、この言葉の最後の音が絵本に登場してしまっていいのかなという点。英語圏ではこの言葉が邪魔になりそうなので、非英語圏では大丈夫だろうとのことだった。
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