Big Red Lollipop おねえちゃんになるということは……

 "Big Red Lollipop"は、ひさびさに感動移入しながらストーリーを追った絵本だった。移民という異文化背景と小さな妹たちのいる家族構成――。この2つのおかげで主人公の少女は辛い現実に直面するのだけれど、同時に姉として心の成長も体験する。
 友だちのお誕生会に招待してもらったルビーナは喜び勇んで下校した。家に帰ってお母さんにことの次第を話すと「お誕生会って、何なの?」。生まれた日をお祝いする会だと説明すると「何でそんなことするんだろうね?」。イスラム圏から移民してきたお母さんには、西洋の文化風習が理解できずにいた。ゲームにおもちゃ、ケーキやアイスクリームがいっぱいのパーティに行きたいとルビーナが浮かれていると、妹のサナが「わたしもいきたい!」と駄々をこねて泣き出した。事情がわからないお母さんは、招かれていない妹もいっしょに連れて行くようにとルビーナに強要する。ルビーナはしかたなく友だちに電話をかけ、事情を説明した。
 異文化をよく理解していないために少々常識はずれの行動に出てしまうこの部分、何だか痛いほどにその犠牲となるルビーナの気持ちが伝わってきた。「変な人だって思われているだろうな……」と後ろに引いてしまうネガティブな心情は、とくに異文化の中で生きていると、経験上、いろんな場面で出てくるものだ。
 この後、お誕生会でもらった大きなペロペロキャンディが、姉妹のいさかいに発展する。ここも何だか気持ちが入ってしまった。幼稚なサナの行動に対して、ルビーナといっしょになって発怒した感がある。許せない〜、みたいな。実際、お姉ちゃんのお誕生会に行きたくて駄々をこねたのは、作者自身だったそう。(パキスタン出身で、3歳のときにカナダに移住。)そんな事実を知ると、とたんにほほえましく思えるのだけれど。
 この画家には"Ruby's Wish"で魅せられたんだっけ。切れ長の目をした人物描写が、けっこう魅力的なのだ。イノシシの絵本シリーズ等も彼女だった。
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Big Red Lollipop

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