The Odious Ogre 人食い巨人と少女のお話

 "The Odious Ogre"は、現代人向けの寓話と言うべきか。世にも恐ろしい人食い巨人が愛らしい少女に出会い、価値観の違いに仰天するお話。
 人食い巨人は殺戮を繰り返し人々を戦慄させることに快感を覚えていた。ところがある日、極悪非道の巨人をまったく脅威と見なさない少女に出会い、自尊心を激しく傷つけられる。これっぽっちも怯えない少女は意図するところもなく巨人にやさしく接するのだが、この行為が人食い巨人には他の何よりも恐ろしい武器だった。……似たようなお話があったなあ、何だっただろう。
 自分の価値観が通用しない少女を前に、巨人は最後に自滅。というわけで、本作の教えは何だろう。「権力の振りかざしは無意味である」とか、少女の視点から見ると、月並みではあるけれど、相手が誰であろうと状況がどうであろうと「常に自分は自分であること」などなど。彼女は最初から最後まで、何が起きているのかまったく把握できていないのだけれど。いずれにしても、権力抗争で慢心する人々を嘲笑する作風だ。
 語りのスタイルに合わせて語彙が少しばかり難解。それゆえ作品は大人向けとも思えたが、メッセージは子どもにも伝わるかな。小学校中高学年ぐらい。
  "The Hello, Goodbye Window (Boston Globe-Horn Book Honors (Awards))"の作者で驚いた。もともとこういう風刺的なストーリーを書く人なのかもしれない。
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The Odious Ogre

The Odious Ogre