ぼくのおさるさん どこ?

 よい絵本というのは、無言でも存在感がある。文字なし絵本『Where's My Monkey? (Lemniscaat Series)』を開き、あらためてそんな風に感じた。これは、絵だけで語る、おさるさんのぬいぐるみのお話。男の子の大切にしていたおさるさんが外出の途中、自転車から落っこちて行方がわからなくなる。おさるさんはねずみたちに拾われ、はりねずみの家に運ばれ、黒い鳥にさらわれ、池に落っこちて……と紆余曲折を経ておもちゃのお医者さん(修理屋さん)のもとへ。
 いいなあ、こういう絵本。子どものファンタジーが生き生きと動き出す展開だ。おもちゃにまつわるお話は夢があり、果てがない。大人だったらノスタルジーにたっぷり包み込まれる。
 わたしなりのよい絵本の定義「何気ない、いつの間にか引き込まれている、あたたかい(心がこもっている・丁寧)」にさらに加えるとしたら、「広がりのある絵本」「つながりのある絵本」だろうか。このおさるさんの作品なら、春先から始まり冬で終るという時間的広がり、見返しに描かれた一望風景の空間的広がり――絵本に出てくるすべての場所が含まれる――、おさるさんが動物たちと何をしたか、その間男の子とおかあさんはどうしていたか、自分のおもちゃはどうか……などというイマジネーションの広がり、が存在する。
 ページを開くと季節感のある自然があり、話題が身近で、親子のぬくもりもが描かれ……と、小さな子どもにしたら夢劇場みたいな絵本だと思う。自分たちで言葉を操れることも楽しい。オランダの絵本。(asukab)
amazon:ディーター・シューベルト

  • 原書と邦訳は表紙が異なる(こちらは英語タイトルのボードブック

Where's My Monkey? (Lemniscaat Series)

Where's My Monkey? (Lemniscaat Series)