芳しい夏の夕べをうたう

 なんだか季節はずれなのだが、素敵な詩の絵本なので記しておく。『Summertime Waltz』は、芳しい夏の夕べをうたう詩の絵本である。夕といっても、こちら米国の夏は夜10時ぐらいまで明るいという事情。長いイブニングの楽しい集いは、草の匂いと笑い声に包まれながら過ぎてゆく。
 冒頭に紹介された詩が、シュールなイラストとともに再び、1行ずつページに繰り広げられるという趣向。これは、「文字だけの詩」と「絵の生み出す詩」が両方味わえて、かなり贅沢な体験になる。
 何より絵が圧巻だ。温度、匂い、音、味……五感すべてに迫る視覚のオンパレードで、ただ者ではない画力を見せる。最初は『Snow Music (Bccb Blue Ribbon Picture Book Awards (Awards))*1の夏版かなという思いもあったのだが、これは違う。ささやかで静かな冬版に対してこちらには華やかさが舞っている。夏のイメージからか、それともイラストから受ける主張の強さからか、夕の空気は洒脱さに支配されている。(asukab)

Summertime Waltz

Summertime Waltz