パイがふたつあったおはなし

 『パイがふたつあったおはなし (ピーターラビットの絵本 19)』は、猫のリビーが犬のダッチェスをお茶に招くお話。2匹による上流階級ご婦人風の会話がおもしろい。息子といっしょに読み、わたしが笑い続けていた。なにしろリビーとダッチェスときたら、慇懃な挨拶を交わし(本音は失礼にあたるので隠しながら)丁寧な会話で、一見和やかな、でも、心中ハラハラし通しの午後を過ごすのだから。その光景は今ならちょっぴりハイソな主婦の会話そのもので、何だかおかしくて仕方がなかった。
 リビーはごちそうとして「ねずみのパイ」を用意するけれど、ダッチェスは正直「ねずみのパイなんて、とても とても たべられない! でも、たべなくちゃ! およばれなんだもの」――。そこでダッチェスは自分の食べたい「子牛とハムのパイ」をリビーの台所のオーブンにこっそり入れておく。ところが、リビーのオーブンは上と下の段からできていて、この二層式オーブンの存在が、お話をさらにユーモラスに展開させるのだった。
 ちょっとした笑劇という感じかな。クスクス、ウフフと笑いが止まらない。後半に登場するお医者さん、カササギ先生も笑えるキャラクターだった。(asukab)

パイがふたつあったおはなし (ピーターラビットの絵本 19)

パイがふたつあったおはなし (ピーターラビットの絵本 19)