Move Over, Rover! 雨の日の友だち

 『Move Over, Rover!』は、日常性と民話の親しみやすさに言葉遊びのリズムが加わったちょっと欲張りな絵本。ジェーン・ダイヤーのイラストだから、幼児向けのおとなしい絵本かな……という印象を最初に抱いた。ところがどっこい、中身は大違い。珍しい(?)設定の中、予測と予測不可のはざまでお話を盛り立てるわくわく感が味わえた。
 季節は秋。変わりやすい天候を背景に、森の動物たちが犬のローバーの小屋に雨宿りにやってくる。猫、アライグマ、リス、カケス、ヘビ、ねずみ……。犬小屋はどんどん膨れ上がり――と書くと、「ああ、あのお話!」*1と思うのだけれど、さあ、どうなっちゃうか。  
 一般的にこういうお話は、動物が擬人化され語られることが多い。でも、ローバーをはじめ動物たちはみな無言のままで、第三者の親しみある語りかけがお話を紡いでいく。ストーリーは作者が子どもの頃、オレゴン州で体験したできごと――嵐の後、犬小屋でヤギが犬といっしょに眠っていた――がきっかけで生まれたそうだ。なるほど、寓話でない生活の一こまを描く風景が、どうりで親近感を生み出す要因になっているわけだ。素朴な水彩画も、一役買っている。振り返ってみれば、家庭(生活)絵本+民話絵本という不思議な味わいをかもし出している絵本だった。
 オチが結構笑えて、オチにつながる冒頭の探し物がまた盛り上がる。このあたりに住む人間だったら、わっはっはーの帰結。紅葉の美しい頃に読みたい一冊。(asukab)
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  • 北米の動物オンパレード

Move Over, Rover!

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