Mary and the Mouse, The Mouse and Mary マリーとねずみさんはおともだち

 小動物に出会ったとき、子どもって必ず動物たちの日常を想像しているように思います。たとえば、庭を駆け回っている子リスとか、入り口ドアの横に大きな巣を作ったクモとか。お父さんがいて、お母さんがいて、お兄ちゃんがいて……と自分と同じ家族構成を描き、自分の生活のように小さな生き物たちの暮らしぶりを思い描いているのです。
 『Mary and the Mouse, The Mouse and Mary』を読んで、作者は子ども時代のそんな空想をこの絵本に託したのだと思わずにはいられませんでした。冒頭はこんな感じです。

 マリーは 小さなねずみさんのすんでいる 大きなおうちにすんでいました。
 ねずみさんは マリーがすむ大きなおうちの中の 小さなおうちにすんでいました。 
 マリーは 母さん、父さん、妹、弟とくらしていました。
 ねずみさんも 母さん、父さん、妹、弟とくらしていました。

 見開きの描写はいつも、左がマリー、右がねずみさんの生活で、人間の女の子とねずみ一家の暮らしぶりが呼応して、それぞれの視点で描かれます。注目するのは、やはり右ページの方。たまご入れの箱がソファになり、ティーバッグのクッションが置かれた光景を見れば、やっかいな「家ねずみ」の印象はたちまち消え去って、小さな間取りでささやかな生活を営むねずみ一家の姿に心引かれてしまいます。
 少女だったマリーは成長し、家を出て大学を卒業し、結婚。子どもをもうけ、女の子のお母さんになります。(女の子の名前は偶然、うちの娘と同じマリアで、彼女が感動したことは言うまでもありません。)当然、ねずみさんも成長し子どもをもうけていました。というわけで、今度はここから子ども世代、マリアと二代目ねずみさんのお話です。マリアはお母さんのマリーと同じようにねずみさんの存在に気づき、ねずみさんのほうも母さんねずみがしたのと同じようにして人間の女の子の存在に気づき……。
 同じ屋根の下に暮らす人間と小さなねずみ――その豊かな暮らしぶりにたっぷり魅せられました。なので、秋にぴったりの絵本かなとも思います。(asukab)
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Mary and the Mouse, The Mouse and Mary

Mary and the Mouse, The Mouse and Mary