スキーマを持つ 1年生の教室で 

 「スキーマ(schema)」はガイデッド・リーディングのキーワードでもある。このプログラムでは、「過去の経験から得た知識、すでに知ってる知識」として使用する用語だが、心理学では「世界を認知したり外界に働きかけたりする土台となる内的な枠組み」(広辞苑)とあり、生徒にとっては多分「新鮮な響き」を持つ、「大人の言葉」に映っているのだろうと思う。
 移民層、貧困層からなるうちのような小学校で、こういう言葉は「魔法」のような働きをする。大人のような、ちょっと偉い、他の誰もきっと知らない、すごい言葉を使っているんだ……というような気分にさせられるのだ。同プログラムでは「あなたは恐竜のスキーマがたくさんあるのね!」「わあ、先生はあなたから昆虫のスキーマを教えてもらったわ!」のようにして、生徒に優越感をたくさん味わってもらうように使用される。こうして子どもたちは「今日は、スカンクのスキーマを増やしたよ」とか「ダンスのスキーマを増やしたいなあ」みたいな会話を交わすのだった。

スキーマ

  1. I have schema about...で、何についてのスキーマを持っているのか、一人一人に尋ね表を作成する。メキシコ、フットボール、赤ちゃんetc.(カーペットコーナー)
  2. 模造紙に作成されたこの表は、教室の見えるところに張り、「○○ちゃんは、△△のスキーマがあるんだよね!」と常に個人に焦点を当て、新たなスキーマ構築を促すように対話を持つ。
  3. どんなスキーマを増やしたいかも同様に表にする。
  4. リーディングに関わらず、ライティングでも算数でも、常に壁に貼っている「スキーマ」を強調し、子どもたちに知識欲を旺盛にするよう仕向ける。
  5. 新しいことを学ぶたびに、「スキーマを増やしたね」とほめる。
  6. 「知識を増やそう」の代わりに「スキーマを増やそう」と合言葉にしている。
  • 知っていることを日常生活の理解に適応させていくことは、ある程度常識なのだけれど、この「schema」という一言だけで子どもたちの目の色が変わっていた。やる気満々。
  • 家庭で小さな頃から読書の習慣があり、親子で本を話題にした対話を繰り返している人には、一見、異様に映るかもしれない「スキーマ」の連発である。(だって、自然じゃないもの。「あっ、それ知ってるよ」で済むところを「ぼくにはそのスキーマがある」と言わせるというか表現する由縁がわたしにはちょっと理解し難かった。でも、うちのような小学校にはこういうプログラムが向くんだろうなあ。「スキーマ」という言葉のおかげで、子どもたちが本に向っている。)
  • 2年生のクラスでは、"I grew schema about......"なんて表現していて、「スキーマを育てる」って、ちょっと行き過ぎの表現じゃないかと感じてしまった。"I added"ならまだ分かるけど。つまり、やっていることは「読書を通じて知識を増やす」という活動なのだが、表現する用語にわたしはどうも違和感を抱いてしまう。