The Nutcracker 少女向きくるみ割り人形

 タイトルに「少女向き」と書いた理由は、『The Nutcracker』の画風が一昔前の少女漫画のように見えたから。とても評判の高いくるみ割り人形の絵本だったので、ツヴェルガー*1やセンダックの作品を思い起こしながら手にして、確かに子ども向けとしては最高のくるみ割り人形だと思った。文字数が少ない。加えて、女の子の好きそうなバレエやダンスの場面がたくさん出てくる。そんな感想を抱いたわけだが、それはまさに作者スーザン・ジェファーズの意図したところだった。
 巻末に彼女が記している。くるみ割り人形の絵本化を薦められたとき「なぜ、これほどまでに知られた作品を、また絵本化するというのか?」と疑問を抱いたそうだ。たぶん自分は手がけないだろうと思ったが、過去の同作品絵本を手にして、2点が心に留まる。1つは、子どもが読むには長すぎるということ――わたしもずっとそう感じていた、これはきっと、誰もが感じていたと思う――。2つめは自分の娘がくるみ割り人形をもっとも楽しんだ理由は、バレエであった事実にもかかわらず、絵本ではバレエの印象が薄い。確かに。子どもは跳んだり跳ねたり、音楽に合わせてふわふわ踊ることで夢中になっているのに、過去の絵本は古典作品として物語に忠実である。そこで本書は、子ども向けに、バレエの要素をたっぷりと盛り込んで、出版に至った。「原書の翻訳を楽しみたい方は、ツヴェルガー版、センダック版を読まれるといいでしょう」とも加えられている。
 実際の舞台がふんだんに描かれ、子どもたちに分かりやすく語られたジェファーズ版のくるみ割り人形。表紙からすでに大人気を保証しているかのような迫力である。(asukab)
amazon:Susan Jeffers

  • 懐かしの少女漫画風で、米国ではちょっと新鮮

The Nutcracker

The Nutcracker