のいちごそうは どこにある?

 さわやかな初夏にぴったりの絵本に出会いました。『のいちごそうはどこにある?』は、ホップさんという「ちいさなひと」と森の動物たちが繰り広げる愉快なお話です。北欧の自然を背景に、親しみのある美しい日本語が語りかけます。
 ホップさんはシュスリング。シュスリングというのは「小さな人たち」で、背丈は(イラストから判断すると)就学前の子どもたちぐらいです。髪の毛が緑色で花柄ズボンをはいているので、花の咲き乱れる野原では見分けがつかなくなってしまうのだそうです。(まず、冒頭のこのイメージでぐぐーんとその世界に引き込まれました。)専門的なことは何も勉強していませんが、妖精や小人の存在は、圧倒的な自然に包まれると自ずと生まれ出るものなのでしょう。そう思わずにはいられなかったホップさんの笑顔といでたちです。
 さて、そのホップさんが「のいちごそう」という4階建ての細長い家を建てました。ここに住人となるハリネズミ、野ウサギ、リス、シジュウカラがやってきて、お家賃のことなどを交わすのですが、みんな後払いで支払えるのか否かが曖昧だったりするわけです。でもホップさんも暢気でお人よしときているから、お金のことなどどうでもよかったりするのですね。
 こんな風に幸せな暮らしの始まったのいちごそうに、ある日、大変なことが起こりました。(ここは娘がわっはっはーとおなかを抱えて笑った部分です。)

どうやら ホップさんは、
どだいづくりを
なまけたらしく
(そこが いちばん
たいせつなのに!)
シジュウカラ
1、2、3とみぎに
よったとたん、
いえ ぜんたいが
かたむいて…。
ぎし…ぎし…がったーん!

 でも、中の住人たちは何もなかったかのように、自分の好きなことに勤しんでいて、そのコントラストが可笑し可愛くてクスクスとしばらく笑いが止まりませんでした。この後にも、ちょこちょこと二転三転できごとが続いて、題名誕生の由来が明かされます。
 「これ図書館の本? それともうちの?」と聞かれたので、ああ、よかった! 娘がこう聞くときは、「大好きなお話なので蔵書しよう」という意味になります。ツボを心地よくくすぐられ目を輝かせながらお楽しみを待つ――ビックリ箱と迷路の混じったようなストーリー展開にすっかり魅せられたのですね。ささやかで極上のお話絵本に心から感謝です。英訳されていないので、日本語で出会えたことが幸運でした。
 濃い青緑と紅色の二色刷り。小粋なスウェーデンの絵本です。手描き風を意識したという文字にも、温もりがいっぱい。縦24センチ×横12センチの背高のっぽ形が目を引きます。(asukab)
amazon:エヴァ・ビロウ

のいちごそうはどこにある?

のいちごそうはどこにある?