Stagecoach Sal 果敢に歌い続けたサリーのお話

 実話をもとにしたという"Stagecoach Sal"がおもしろかった。怪我をした父親のかわりに駅馬車の御者を務めるサリー。子どもの頃から乗りなれてるとは言え、一人で任務を遂行するのは初めてだ。カリフォルニア州ユカイアからウィリツへ、彼女は郵便を届ける旅に出る。途中出会うのは礼儀正しく強盗行為に及ぶという無法者、通称「詩人のピート」。サリーはピートを馬車に乗せたものの強盗はさせまいと、好きな歌を一昼夜歌い続けた。そうこうするうちに、ピートは……。わはは、結末が傑作。
 サリーのモデルは、「歌うディーリア」として名を馳せたディーリア・ハスケット・ロウソン(1861年生まれ)。父親が保安官や郵便局員を務めるなど地域の中心的人物だったことから、彼女は少女期から正義感にあふれる性格の持ち主だったようだ。しかも活発さに加え、地元のダンスパーティでもっとも美しい女性に選ばれるなど容姿も整っていたらしい。だからだろうか、詩人のピート(実在のモデルはブラック・バート)は何度かディーリアの駅馬車に乗り合いしたものの、犯罪に及ぶことは一度もなかったという。淑女を淑女として扱ったのか。それにしても、彼の存在もユニークだ。強盗した後に必ず詩を一編残していったというのだから、乾いた荒野にあってかなり風雅。
 作家、画家ともにオレゴン在住というのも、西部っぽくて好きだった。
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Stagecoach Sal

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