これから半世紀のこと

 今年あたまのクリスマスに"Auggie Wren's Christmas Story"を読んで、大粒の涙をこぼした。あらためて物語の力、言葉の力を思い知らされ、日本語でそのようなものを表現してみたいと誓ったのだった。
 でも、それは自分の言葉でなければならない。だから、どうして翻訳なのだろうと、後で納得できなくなった。明治維新以降続けている西洋文明の輸入は、グローバル化時代の現在にはもう必要ないだろう。というか、精選されるべきだ。
 それでも大学時代に学んだ英文学は、言葉を眺める際の重要なツールになった。シェイクスピアからは多大な影響を受け、人生観を象ってもらった。今はこの収穫を、自分の創造に役立てたい。
 一年間詠草を続けてみて、自分には歌の道がもっとも適していると見えてきた。貫之、定家、芭蕉が生涯を通して成立させた日本美の系譜を、どうして蔑ろにできよう。これから残り半世紀弱、願わくば定家の父俊成のように九十まで生き、歌の道を究めたい。
 今から半世紀を経て、残るものは何だろう。希望に胸をふくらませ、2010年の終わりに記す。
Auggie Wren's Christmas Story 「いいお話だった、おばあちゃんのところが」 - 絵本手帖