We are the Ship: The Story of Negro League Baseball MLBファンに贈る永久保存版 ニグロ・リーグのすべて

 『We Are the Ship (Coretta Scott King Author Award Winner)』には、魂がこもっている。ニグロ・リーグのことは写真でしか学んだことがなかったが、ネルソンの絵筆にかかるとこれほどまでに迫力がかるのかと圧倒された。
 序文は、本塁打王ハンク・アーロン。1回表、サッシェル・ペイジの引用文で、米国黒人球史叙述の幕が切って落とされる。これは、ファンにはたまらない一冊だ。往年のスター選手たちが堂々と肩を並べ、熱っぽいまなざしでこちらを見据えている。1924年10月11日、ミズーリー州カンザスシティで開催された第一回黒人野球ワールドシリーズのチケットが観音開きで大きく紹介されていたりもする。6回にはラテン諸国から参加していた選手を紹介し、7回には白人リーグとの交流戦について触れている。きめ細かに取材を重ねた、賞賛しても賞賛しきれないほどの内容は、ずしりと重い全88ページの体裁にそのまま表れる。
 9回最終回の攻撃は、もちろんジャッキー・ロビンソンだ。人種差別の壁を打ち破ったブルックリン・ドジャーズGMブランチ・リッキーとともに、燦然と本書のトリを務めるのである。そうして延長回、米球史の汚点とも言えるニグロ・リーグは幕を閉じる。
 個人的に、米国を知りたければ「ジャズ、女性史、野球史」を知らずして何になると理解する中、本書は決定的にその必読書だと明言したい。
 初めて文章も担当した作者渾身の一冊。今週初め、米国図書協会から数々の賞を受けたのだが、当然のなりゆきである。
amazon:Kadir Nelson

We Are the Ship (Coretta Scott King Author Award Winner)

We Are the Ship (Coretta Scott King Author Award Winner)