Ernest, the Moose Who Doesn't Fit はみだしっ子の物語

 かわいいなあ! 大きいのと小さいのと、サイズの対照的なキャラクターが登場するお話は、その設定だけでひきつけられる。"Ernest, the Moose Who Doesn't Fit"は、体が大きすぎて本の中におさまらないムースのお話だ。でも、確かに悩みを抱えるムースのアーネストではあるのだけれど、ちっとも嘆かわしく見えない。それどころか彼のおおらかな表情が穏やかな雰囲気を生み、ほんわか、ゆったり、読者はほどよい心地よさで包まれる。
 モーさんのカエル・ポップアップ絵本が同じような構想だったので、読み始めはそれほどワクワクした感じもなかった。でも、ここがアーティストの腕の見せどころ。「主人公が本のサイズに納まらない設定の絵本を作りなさい」と課題が与えられたら、わたしだったらどう展開させるだろう。本作では友だちのこりすが知恵を貸してあげ、すてきな終幕を演出する。
 巨大なアーネストとちょこちょここりすの対比、登場キャラクターの豊かな表情と個性、画材の特徴を生かした軽妙な筆致、方眼紙やラッピング・ペーパーなど紙の質感を強調したアート性……そして、そして、これら作品の魅力を一気にひとつにつなぎ合わせる最大のヒーローは……マスキングテープ! これは楽しい! わたしもいっしょに小さな紙切れをつなぎ合わせ、大きなアーネストを救済するプロジェクトに取り組みたい。そんなアート心を刺激する最後の折り込みページを、娘とともにしばし見入った。
 英国の絵本。作者は異質な存在を多くテーマにしているが、彼女の作品では一番のお気に入りになった。
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Ernest, the Moose Who Doesn't Fit

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