art
もしも光が見えなかったら、人はどのような感性を用いて世界を形容するのだろう。 大学のとき、ボランティアで目の見えない子どもたちのために絵本を作ろうとした。「自分なりのイメージで絵本を作ってみてください」とグループの主宰者からアドバイスを受け…
小さな子どもたちにエコロジーを説く『10 Things I Can Do to Help My World』。リサイクル紙使用の素朴な風合いがあたたかく、表紙は控えめな地色(米国版)にもかかわらず存在感を示していました。デザイン性に富んだ穴あきやめくりが仕かけてあり、遊びな…
『Art: A World History』は、お世話になった児童書店の閉店セールで購入しました。何か思い出に残るものをと思い、ゴージャスなポップアップ仕掛け絵本『We're Going on a Bear Hunt』にも心引かれたのですが、結局こちらを選びました。絵本の「絵」のこと…
扱われている感情は、怒り、不平不満。熱く怒りに満ちた気持ちは胸の内に秘めるよりも、そっと外に出してあげたほうがいい――言葉のリズムに乗ってそんなアドバイスをする絵本が『Grump Groan Growl』です。 絵手紙風のイラストに色が付けられ、ページ狭しと…
『Show and Tell: Exploring the Fine Art of Children's Book Illustration』は、近年の米国絵本画家を取り上げ、絵本のイラストをアートとして解説する一冊です。一昔前なら、すぐに飛びついていたであろうこの手の美術書。魅力は感じたのですが、書店で手…
まだまだ肌寒く、春遠い日が続きます。そんなときに水辺の豊かな自然を謳歌した『Scoot!』のような絵本を見てしまうと、さわやかな夏がたまらなく恋しくなります。果たして今年、当地に夏は来るのでしょうか。あまりに寒い日ばかりなので、ふと心配になって…
『Silent Music: A Story of Baghdad』のタイトルと表紙イラストから浮かんだキーワードは、音楽、砂漠、サッカーでした。でも、これらはすべて絵本に背景に見えるもの。作品は、イスラム文化に古くから伝わるカリグラフィーに心を重ねる少年アリを描きます。…
これまた海の描写が美しい絵本*1。『Necks Out for Adventure: The True Story of Edwin Wiggleskin』は、蛤が主人公という珍しい絵本です。波しぶきをあげるエメラルド・グリーンを見ているだけで、ほれぼれとしてしまいました。きれい。北斎の波うらのよう…
『How To Paint the Portrait of a Bird』は、冬に読んでいて、ずっと記さずにいた絵本。書かずにずっとそのままにしていた理由は、たぶん小鳥のさえずりが届かない季節だったから。今はさえずりに目を覚ましてもらうほどで、表紙の青い鳥がすぐに目に浮かん…
娘と書店に足を運んだ際、目が釘付けになってしまった絵本が『Gallop! (Scanimation)』。なにやら特許出願中の新テクノロジー「スキャ二メーション(Scanimation)」使用の絵本とかで、ページをめくると動物が動き始めるのです。昨年11月の発刊以来14版を重ね…
一筆書きの魅力が詰まった絵本『Follow the Line』(邦訳『せんをたどって (講談社の翻訳絵本)』)*1の第二弾『Follow the Line through the House』が出ていました。今度は家の周辺を一筆書きでたどりながら、数を数えたり、探し物の質問に答えたりします。…
『Tip Tip Dig Dig』は一見、「男の子の好きそうな働く自動車の絵本」と理解したが、全然そうじゃなかった。心和むすてきなメッセージを伝えてくれる理由は、最後のページ。ここが、普通の自動車絵本と一線を画している。 ごみ山の一角を見て、働く自動車が…
昨日と同じ画家の絵本。『1-2-3: A Child's First Counting Book』というタイトルから、赤ちゃん向けだろうからうちには向かないかな……と思っていたら、とんでもない! 誰もが子ども時代を振り返りたくなる、すてきな数の絵本だった。おとぎ話が好きな人に限…
耳を澄まして――で始まり、草むら、海辺、秋の森、収穫の畑、雪降る夜など、四季のさまざまな場面で聴こえてくる「音」を捉えた絵本が『Listen, Listen!』である。出版の目的が「アートと物語を称える」とあり、非常に興味をそそられた。イラストは確かに絵本…
『Not a Box』(邦訳『はこははこ?』)*1から一年後、今度は棒を見立て遊びに使うブタさんの絵本が出ました。その名も『Not a Stick』。箱の素材感に「赤」を効かせた一冊目の雰囲気をそのままに、二冊目は棒=木の温もりと「青」を生かしています。 子ども…
『Artist to Artist: 23 Major Illustrators Talk to Children About Their Art』は、2002年に開館したCarle Museum |で初期に展示されたアーティスト23人の「人となり」を紹介する。 タイトル「アーティスト(=画家たち)からアーティスト(=子どもたち)…
韻を踏んだリズミカルな文章と印象派のような心地よい絵画で、世界中の釣り風景を描いた絵本が『How to Catch a Fish』。これはもう、言葉も絵も、ため息ものの美しさです。 「魚釣りは、こうやってするんだよ……」と話す親子の姿で始まり、トバゴ・タートル…
アート絵本は何冊持っていてもいいほど、楽しみ甲斐があります。『Look! Body Language in Art』は、絵画中人物のボディー・ランゲージに注目したアート解説絵本です。絵の中のドラマから人々の感情を汲み取るわけですが、これが非常におもしろい。人間の機…
「色」に敏感な自分としては、『Living Color』のような絵本は特別なクラスに入れたくなる。登場するのは色鮮やかな生き物たち。全66匹が、赤、青、黄、緑、オレンジ、ピンク、紫の色に分けられ、トリビア的な解説付きで紹介される。写真だったら普通かもし…
ちょっとシュールでほんのり温かい絵本に出会いました。『Chester』は、寂しげな犬の姿を通して、現代社会の一面を投影させる哀愁帯びた絵本です。同時にアート心もくすぐり、画集として飾っておきたいような風貌も持ち合わせます。 家族のみんなは学校や会…
『First the Egg (Theodor Seuss Geisel Honor Book (Awards))』は、ページの切り抜きから除く次の世界が楽しみな、かわいらしい仕掛け絵本。表紙の白いたまごも切り抜きです。たまごが先なのか、にわとりが先なのか。同様の質問は、おたまじゃくし&かえる…
春節のことを思うと、『Dragon Dancing』も季節はずれの絵本。メイ・リンのお誕生日に、子どもたちがドラゴン作りをします。カラフルなリボン、ひも、紙を使って飾りつけする光景は、思わずわたしも手を伸ばしたくなったほど。ドラゴンって、鮮やかな色の重…
『Dogs and Cats』は、犬と猫の生態、おもしろ知識をそれぞれ表紙、裏表紙から解説するノンフィクションさかさま絵本です。 さかさま絵本なので、表紙は何も犬でなくていいのですが、アマゾンの登録は犬の表紙でした。猫の表紙には赤地にチャコールグレーの…
アート心をくすぐる、楽しい絵本に出会いました。日頃「アート」からかけ離れていても、『My Dog Is As Smelly As Dirty Socks: And Other Funny Family Portraits』を開いたら、ふと机の上に置かれたボールペンと石ころ、消しゴムなんかを使って、誰かの顔…
夏の終りに子どもたちといっしょに読んだ詩の絵本『Comets, Stars, the Moon, and Mars: Space Poems and Paintings』は、宇宙がテーマです。学校で習ったことがこんな風にイメージ豊かな詩になるとは、きっと彼らは想像しなかったことでしょう。最近除外さ…
抽象画は、心象画――。最近、遅ればせながらやっとアブストラクトの意味がわかった。色は心の叫びだったのだ。目に見えるものを描くのではない。つまり、目に見えないものを描いている。深さの極み。芸術の意味がここにある。抽象が見えた理由は、id:mmpoloさ…
詩の絵本といっても、『Meow Ruff: A Story in Concrete Poetry』にはストーリーがある。主人公は犬と猫で、この二匹を取り巻く光景が、文字と言葉によるイラストで表現される。 こういう表現法をアートではなんと言うのだろう。空の雲は、綿雲のようなふん…
ダンボール箱のどこがそんなにおもしろいの?――大人はそんな思いで眺めてしまうけれど、当の本人にしてみればこれほど心うかれる「おもちゃ」はないらしい。箱に乗り込んだり、中に隠れたり、子どもは箱を「何か」に見立て、イマジネーションの世界にとっぷ…
写真で見る動物にも惹かれるけれど、デフォルメされ黒や赤一色で表される姿も美しい。ABCのアルファベット二十六文字が、絶滅寸前の動物たちの一部あるいは全体像となり紹介される『Gone Wild (Caldecott Honor Book)』――。ここには動物たちをかたどった究極…
アンディ・ウォーホールといえば、キャンベルのスープ缶、コカ・コーラ、マリリン・モンローが真っ先に頭に浮かぶ。ついで、コマーシャルアートの旗手は奇妙ないでたちで、さぞかしニューヨークライフを謳歌したことだろう、みたいな人工的なイメージばかり…