poetry

Read It, Don't Eat It! ライブラリアンが大喜びの絵本

イラストも言葉も、かわいいし、はずんでいるし、最高! 韻を踏みながら、小さな子どもたちに本の扱い方を諭す絵本"Read It, Don't Eat It!"は、本好きさんには胸キュンの絵本だと思う。 左ページに堂々と、一文ずつ本の取り扱い方が記され、右ページには可…

Big and Small, Rom for All 森羅万象の詩

"Big and Small, Room for All"は、子どもたちに森羅万象を体感させるのにぴったりの詩の絵本。宇宙の広さを自分の身近な存在である小動物からイメージさせる、広大な構想の作品だと思った。 見たままの写実画が鮮明に、身の回りの自然界のイメージを与えて…

Blueberry Girld 赤ちゃんの娘に贈るうた

"Blueberry Girl"――やけに話題に上っていたので手にしてみた。 娘と出会ったばかりの、まっさらなこの感性は懐かしいなと思い出に浸る一方で、天地創造まで巻き込むイメージ描写が何か原理主義者を想起させたり……。生命や自然の神秘を美化し過ぎているようで…

Wombat Walkabout オーストラリアを懐かしむ絵本

Wombat, Walkabout, Dingo, Wattle Tree, Billabong, Eucalyptus, Kookaburra, Swag...。"Wombat Walkabout"は、オーストラリア縁のことばが満載の絵本です。構成としては英語の遊び歌'Five Little Pumpkins'を模倣し、6匹のウォンバットが1匹ずつ減っていく…

A is for Art: An Abstract Alphabet 渾身の抽象・造形アート26点

息子が赤ちゃんの頃に話題となったコルデコット賞オナー絵本"Alphabet City (Caldecott Honor Book)"は、彼のお気に入りABC絵本だった。リアリスティックな水彩画は子どもの目にわかりやすく、何度もページを眺めては自分の身のまわりにもどこかにABCの文字…

Orangutan Tongs: Poems to Tangle Your Tongue 舌がもつれそうな言葉遊びの詩の絵本

"Orangutan Tongs"は、早口ことばにすると舌がもつれてしまいそうな詩ばかりの絵本。これは、なかなか楽しいぞ。たとえば……: "Felt Hat" I used to wear a felt hat, and I felt the hat felt right, But I swapped it for a belt, although I felt the bel…

A Whiff of Pine, a Hint of Skunk: A Forest of Poems どうぶつたちの森の詩

これまたすてきな詩集絵本に出会った。鳥の詩集をまとめた絵本『Today at the Bluebird Cafe』*1と同じ作者コンビによる動物の詩の絵本『A Whiff of Pine, a Hint of Skunk: A Forest of Poems』である。ページをめくると、スカンクやビーバー、かたつむりや…

All in a Day 自然をたたえる詩の絵本

自然や季節をたたえる詩は、数多くある。自然詠は基本中の基本テーマなので視点の瑞々しさが多々問われる中、『All in a Day』に強く惹かれた理由は、題材が当地の自然だったからだろうか。知らず知らずのうちに見入り、読み入り、太陽の温もりや土の湿りぐ…

The Apple Pie that Papa Baked パパがやいたアップルパイ

甘酸っぱい香りのアップルパイは、大地の恵みとパパの愛情がたっぷり焼き込まれた一品。自然のいつくしみに感謝しながら、ひとくち、ふたくち。りんごの果肉色のような表紙の色調を目にするだけで、すでにアップルパイが食べたくなっているのだから、ページ…

Birds ケビン・ヘンキースの新しい絵本

最新作は『Birds』。画風が違うと思ったら、奥さんが絵を担当していた。太い黒の輪郭線を生かしながら厚く塗りこむスタイルは、けっこう好みかもしれない。 絵本は、たくさんの鳥の姿を紹介する。黄色い鳥、青い鳥、茶色の鳥、赤い鳥、緑の鳥。大きさも背高…

チキンスープ・ライスいり 12のつきのほん

息子の誕生月を迎え、15年の歳月に想いを馳せました。まだ少年ですが、なんとなく青年になりつつもあり、微妙な年頃です。学校の行き帰り、とぼとぼと向こうから歩いてくる姿を見て手を振ると、恥ずかしそうに振り返してくれる、その気持ちがうれしいです。…

The Bill Martin Jr Big Book of Poetry ビル・マーチン Jr.(1916-2004)編纂の詩集

『The Bill Martin Jr Big Book of Poetry』*1を開き、自分もいつかこのように好きな詩歌を集めた詩集を編んでみたいなと想い描いた。このような豪華版は、ぜったいに不可能だけれど。なにせ序文がエリック・カール。以下、ラシュカやヤッカリーノ、エイラト…

my people モノクロ写真の美しさ

たった33の言葉を、どのように写真として表現するか。表題中の「ピープル」はいったい誰なのか――年寄り、若者、黒人、白人、それとも人々すべて? そして、その表情は、真剣なのか、陽気なのか、顔だけ、体全体?――。写真家である作者がまっさらな気持ちで詩…

Posy こねこのポージー 

こねこのシマ猫を描く『Posy』は、もちろんイラストも十分に魅力的なのだけれど、それ以上に言葉のイメージが可愛らしい。韻を踏んだリズムと合わせ、言葉だけで十分にこねこと遊べる詩の世界が広がっていく。メンタル・イメージの威力、ここにあり。 メンタ…

Wabi Sabi 侘び寂び、一茶、子規

和紙を使ったコラージュが果てしなく渋い。『Wabi Sabi』では、一茶、子規の俳句を紹介しながら、和猫のワビサビが侘び寂びの世界に迫る。 日本人から見たら、どうなのだろう。単に西洋受けする絵本にも思えた。侘び寂びを探訪する一匹の猫の存在から、江戸…

A River of Words: The Story of William Carlos Williams ある詩人の功績

『A River of Words: The Story of William Carlos Williams』は、現代米国詩に多大な影響を与えた詩人で医師のウィリアム・カルロス・ウィリアムズの生涯を描く絵本。 米国詩において日常詠は彼が始めたという。生活感にあふれ、人々に愛された理由がたやす…

Traces あしあとをおえば……

無いものを見る作業は楽しい。自然の中にひっそりと残された動物たちの「あしあと」を目にして、今さらながら足跡の魅力を確かめた。といっても絵本『Traces』でのことだけど。 なにかが、だれかが、たった今までここにいて、ふといなくなった――あしあとだけ…

When a Monster is Born ゆかいなモンスターのぐるぐる話

ひさびさに「わはは」と笑える絵本を読みました。 ハロウィンの近いこともあり娘と選んだ絵本は、モンスターが主人公の『When a Monster Is Born』。ブラジルに伝わる赤ちゃん誕生の詩"When a Baby is Born"をもとに書いたというお話で、10月31日とはまった…

さいこうの いちにち

新学期が始まり、自分でも驚くほど充実の日々が続いている。去年の2クラスから増え、今年は4クラスでのチューターなのだが、想像以上にストレスがたまらずにいて意外や意外、素直にうれしい。やはり過去2年間は、担当したクラスの質によったのだ。この非常に…

Ten Little Fingers and Ten Little Toes あかちゃんのぬくもりを抱く絵本

史上最強コンビによる絵本と謳われていた『Ten Little Fingers and Ten Little Toes』。ほんとうにそのとおり。世界中の赤ちゃんを描き、最後に人間の根源を赤ちゃんとお母さんの姿を通して示す。ぬくもりを抱きしめ次世代に伝えていくことが生きる目的と言…

M is for Mischief こまったちゃん大集合のABC

『M Is for Mischief: An A to Z of Naughty Children』は、なかなか傑作でした。個性的な性格の子どもたちが、アルファベット順に紹介されています。どのくらい「個性的」なのかと言えば、「本書には不愉快にさせられる子どもも登場します。そのあたりを承…

The Mouse of Amherst エミリ・ディキンスン家のネズミ

『The Mouse of Amherst』は、夏休み前からずっと気になっていた児童書。小学校の図書館で表紙を目にしたときから「読まなくちゃ!」の直感が走り、休みに入ると同時に借りてきた。もう、この小さな家ネズミの姿からして啓示ではないかと思ってしまったほど…

Frankenstein Takes the Cake

『Frankenstein Makes a Sandwich』*1の2冊目『Frankenstein Takes the Cake』にも、たくさんの怪物がご登場。ハロウィンの場面も出てくることから、10月にぴったりです。 今度も、フランケンシュタインの結婚準備、首なし男のブログ、エドガー・アラン・ポ…

こうちゃん

ずっと読んでみたいと思っていました。タイトル『こうちゃん』からして、温もりに満ちているので。けれども読み始めると、想像していたのとは違う、一風変わった気持ちに包まれます。「こうちゃん」って、誰なの? 作品全体にわたる掴もうとしても掴めない「…

Don't Bump the Glump! and Other Fantasies

1964年初版、シルヴァステインの処女詩集『Don't Bump the Glump!: And Other Fantasies』の再版。奇妙なおばけ風の生き物がいろいろ歌われるわけですが、これが結構人間描写をしているようでおもしろいです。「そういえば、こんな感じの人いるなあ……」など…

Wynken Blynken, and Nod

月の光を浴びながら、星のお魚釣り――。まろやかな光のイメージが広がり、思わずうっとりとしてしまった絵本が『Wynken, Blynken, and Nod』です。原作は「オランダの子守唄 "Dutch's Lullaby"」(1889年)と呼ばれるユージーン・フィールドの有名な詩とのこ…

Colonial Voices: Hear them Speak

ボストン・ティー・パーティ事件――英国議会による東インド会社の茶税を課された植民者たちが、船中の茶を海に投げ捨てた事件。『Colonial Voices: Hear Them Speak』では1773年12月16日の事件当夜に向けて、早朝からボストンの人々がどんな時間を過ごしてい…

The House in the Night

『The House in the Night』の表紙で思い出したのが、ワンダ・ガアグの一連作品。この絵本では浮かび上がる光の白と闇に沈む黒を背景に、静かな夜が歌い出す。 始まりは、ひとつの鍵。中表紙には序章として金色の鍵が示され、絵本の中の絵本が開かれている。…

Potato Joe じゃがいもジョーの遊び歌

ぜったい、畑でごろごろ転がるジャガイモを見て生まれた絵本。『Potato Joe』では、ジョーの仲間たちが数を数えたり言葉遊びをしたりで、小さな子ども向けの「ザ・畑エンタテイメント」が賑やかに繰り広げられる。じゃがいもたちが一言ずつ台詞を発する姿に…

On the Farm 農場の動物たち

『On the Farm』は、のどかな農場の光景を動物の詩で表した絵本です。どの詩も簡潔でリズムがあり、低学年の詩の授業にぴったりだと思いました。 しかしながら、詩の学習はこの絵本に限らず、さらなる五感にしみこんだスキーマがないと味わえません。ご多分…