2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

2009年米国コルデコット賞受賞作品

今月23日から29日までコロラド州デンバーで開催されていた全米図書協会冬季大会にて、2009年度コルデコット賞の発表がありました。タイトルを調べてみたところ、すべてレビューが揃っているので、ここにご紹介します。◆をクリックすると、レビューに飛びます…

英語ではないグロービッシュの繁栄

機能語(道具)としての英語が広まり、英語こそ存続の危機に瀕しているのかもしれない……との問いを投げかける内容の記事*1を読んだ。もはやこの言語は英語(English)とは呼ばれず、グロービッシュ(Globish)の名称を持つ。実際、移民児童の多い土地に住んでい…

We are the Ship: The Story of Negro League Baseball MLBファンに贈る永久保存版 ニグロ・リーグのすべて

『We Are the Ship (Coretta Scott King Author Award Winner)』には、魂がこもっている。ニグロ・リーグのことは写真でしか学んだことがなかったが、ネルソンの絵筆にかかるとこれほどまでに迫力がかるのかと圧倒された。 序文は、本塁打王ハンク・アーロン…

Little Panda レトロな赤茶色とコロコロパンダ

『Little Panda』は変てこに渋い絵本だった。表紙からして「1950年初版」と言われたら信じてしまうような色使い。日焼けしたようにも見えるあせた赤茶を背景に、中国パンダのお話ということで、縦書きでレトロな雰囲気漂うレタリングが並んでいる。 「空とぶ…

How to Heal a Broken Wing ある家族のポートレート

ボブ・グラハムの絵本*1,*2には暮らしの風景が何気なく描かれており、そこから見て取れる人の生き方がしんみりと豊かな味わいを与えてくれます。『How to Heal a Broken Wing』(邦訳『きずついたつばさをなおすには (児童図書館・絵本の部屋)』)も、やはり…

猫好きさんに贈る、ねこの絵本リスト

寒い日が続きます。そんな日は家の犬猫トリオの存在が非常にありがたく感じられ、感謝。ということで「猫はこたつで丸くなる」ようなぬくもりを求め、今日はおすすめ「ねこの絵本」リストを挙げてみます。まだまだありますので、随時、加えていきますね。◆を…

あたたかい冬の絵本…ぼうし、てぶくろ、マフラー、セーター、くつしたがテーマのリスト

昨日『The Story Blanket』(邦訳『おはなしのもうふ』)のことを記し、ふと、毛糸の帽子や手ぶくろ、マフラー、セーター、くつしたなど「あたたかい冬」をテーマにした絵本のリストを作ってみようと思い立ちました。 リストは翻訳絵本ばかりですが、何とな…

おはなしの もうふ

クリスマス期に出会った絵本は何かしら魔法がかっており、手にするだけで作品に不思議な息を吹き込まれるような気がします。『Story Blanket, the』もそのような一冊で、ストーリーの内容とあい重なり心がほかほかしてきました。 ザラおばあちゃんの住む村は…

コッコじかんが はじまるよ

犬猫ワールドにかしましいニワトリコンビが加わって、裏庭模様にいちだんと彩が増しはじめたのが一昨年の秋。何気ないしぐさや動作、反応から彼らの個性をうかがうことが家族みんなの楽しみになり、家庭内コミュニケーションの多くがスクーターやギャビ、デ…

ゴリオとヒメちゃん

先日ご紹介した『Little Beauty』*1の邦訳がさっそく出たようです。その名も『ゴリオとヒメちゃん (児童図書館・絵本の部屋)』。タイトルからして誘ってくれますね。どのような美女と野獣ワールドが日本語で展開されるのでしょう。ワクワクしてきます。 レビ…

Boycott Blues: How Rosa Parks Inspired a Nation キング牧師記念集会を前に

今週金曜日、主人の小学校でキング牧師を記念する集会が開かれる。各クラス、あるいは学年で、それぞれ発表を行うのだけれども、主人のクラスのプレゼンテーションがすごくすてきなのだ。アイデアは、娘が宿題で取り組んでいたブックレポートから拝借。米史…

Our Abe Lincoln: An Old Tune With New Lyrics 大統領選挙キャンペーンソングが絵本になった

『Our Abe Lincoln: An Old Tune With New Lyrics』は、実際にリンカーン大統領選挙戦の際に歌われていたキャンペーンソングを用いて彼の生涯を紹介するユニークな絵本。民謡"The Old Grey Mare"のメロディに乗って、リンカーン誕生から少年期、青年期、大統…

We the People: The Story of Our Constitution オバマ大統領就任演説によせて

1776年7月4日、独立宣言を高らかに謳ったものの、国家としては未熟でその後も問題が絶えなかった若い米国。『We the People: The Story of Our Constitution』は1787年5月、フィラデルフィアに集結した13州の代表が憲法制定を目指し議論する過程を時系列で追…

ボクの穴、彼の穴。

『ボクの穴、彼の穴。』は、先日ご紹介した反戦絵本『The Enemy』*1の邦訳ではないでしょうか。米国発売は4月なので、日本語で一足お先に読めるというのは幸せです。 ガザからイスラエル軍が撤退しましたが、今回パレスチナの地に残された深い傷はそうたやす…

ティリーとおともだちブック シリーズ

『Hello, Tilly: A Tilly and Friends Books』*1をご紹介した、その一週間後に邦訳出版のニュースを知りました。こちらのシリーズは、無垢な可愛いらしさにかけたら右に出るものなしと断言したいほど、子どもの喜びを素直に描く作品です。わたしもぜひ、日本…

Little Beauty 美女と野獣おちゃめナンセンス絵本

何と言おうか、アンソニー・ブラウンだからこそなしえた、おちゃめな美女と野獣の世界。『Little Beauty』(邦訳『ゴリオとヒメちゃん (児童図書館・絵本の部屋)』)は、大人かわいい2匹の関係をリアリズムと素描にユーモアを絡めて描く、きわめて稀な絵本で…

Mr. Lincoln's Boys: Being the Mostly True Adventures of Abraham Lincoln's Trouble-Making Sons, Tad and Willie リンカーン・ボーイズの逸話

『Mr. Lincoln's Boys』は、ホワイト・ハウスで暮らしたリンカーン一家の側面を2人の息子に焦点を当てながら描く。リンカーン大統領の就任が1861年なので、作中では三男ウィリアムが10歳、四男トーマスは7歳。相当のいたずらっ子だったらしい。 南北戦争勃発…

Abe's Honest Words: The Life of Abraham Lincoln リンカーン大統領のまっすぐなことば

リンカーン大統領生誕200年を前に昨年、多くの関連絵本が刊行された。『Abe's Honest Words (Big Words)』は中でも特出していた印象が残る。伝記名言シリーズ『Martin's Big Words』(邦訳『キング牧師の力づよいことば―マーティン・ルーサー・キングの生涯…

Wabi Sabi 侘び寂び、一茶、子規

和紙を使ったコラージュが果てしなく渋い。『Wabi Sabi』では、一茶、子規の俳句を紹介しながら、和猫のワビサビが侘び寂びの世界に迫る。 日本人から見たら、どうなのだろう。単に西洋受けする絵本にも思えた。侘び寂びを探訪する一匹の猫の存在から、江戸…

The Baby in the Hat 19世紀の英国がかおる絵本

『The Baby in the Hat』は、七つの海を征した大英帝国の薫りにたっぷり浸れる絵本。落ち着いた中間色使いの水彩には、植民地政策を推し進め「太陽の沈まない国」となった誇りが気高く描かれる。一種の憧憬さえ抱いでしまうけれど、その裏返しは現在の紛争。…

Peter and the Wolf ラシュカのピーターとおおかみ

ホリデーシーズンを振り返ると、何冊か記録していなかった絵本がありました。クリス・ラシュカの『Peter and the Wolf』 "*1も、その一冊。 こちらは紙製の立体舞台じかけを写真撮影し絵本化したという、なかなか凝った作品です。雰囲気がクリスマス期にお似…

The Cardboard Piano なかよしふたりのおはなし

『The Cardboard Piano』と聞いて、そういえばわたしもピアノを習い始めた頃、紙の鍵盤に指を置いてキーの名称を覚える練習をしたっけ……と思い出した。紙の存在はたとえ見立てであっても子ども心をくすぐり、自分が魅せられたのと同様に娘もさっそく作りたい…

Aqualine: A Renewable Energy Thriller 主人が小説を上梓しました

義父の書き残したSF小説を受け継ぎ、足かけ5年。『Aqualine: A Renewable Energy Thriller』が先月18日、刊行となりました。時は2016年。石油危機に瀕した全世界を救おうとする一研究者を主人公にした、スリルとサスペンスに満ちた娯楽フィクション小説です…

The Enemy パレスチナ和解は永遠の夢か

ホロコーストを通り抜けたユダヤ人なので、選民思想がさらに深まり盲目的になっているのか。親を亡くした子ども、子どもを失った親……憎しみはパレスチナの地に醜く刻まれていく。美しい土地に爆音がとどろき、黒煙が上がり……。世界中に散らばるユダヤ人社会…

なぜ戦争はよくないか

war

『Why War Is Never a Good Idea』*1の邦訳『なぜ戦争はよくないか』が出ていた。ガザ地区で起きているイスラエルとパレスチナの報復合戦を目の当たりにする今、まわりは何もできず、人命を救えない無力に愕然とするばかりだ。当事者たちは憎しみに包まれた…

How to Make a Cherry Pie and See the U.S.A. こんどは、さくらんぼパイ

『How to Make an Apple Pie and See the World』(邦訳『アップルパイをつくりましょ―りょこうもいっしょにしちゃいましょ』*1)で世界旅行をした14年後、こんどは『How to Make a Cherry Pie and See the U.S.A.』で米国旅行をしてさくらんぼパイを作りま…

Hello Tilly: A Tilly and Friends Book かわいい……とは、こういうこと

ティリーは、お友だちといっしょに黄色のおうちに住んでいるんだって。あひゃひゃひゃ……、かわいいとは、こういうことなのですね。『Hello, Tilly: A Tilly and Friends Books』を手にして、もうメロメロでした。 小さな子どもの夢物語。出てくる動物たちは…

Please Don't Tease Tootsie お花にかこまれたかわいいペットちゃん

もろに娘、息子のテイストにぴったりな絵本が『Please Don't Tease Tootsie』です。ペットたちの表情、子どもたちの行為、お花に囲まれたしあわせいっぱいの見返しイラスト……どの視点からも、うちのために作られたのでは……と思えてしまいます。 絵本にストー…

雪の絵本棚

クリスマスもおしまいということで、アマゾンくるくるウィジェットを雪の絵本棚に変えてみました。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ペーテルとぺトラ

ふたたび雪。外界が白一面に覆われると不思議なもので、いろいろな想いが顔をのぞかせます。これは、雪国が思索に向く証でしょう。氷と雪に閉ざされた冬は純白なだけに、人の心を清め、透明な気持ちで事象を見抜く力を宿してくれるかのかもしれません。この…