summer

velma gratch & the way cool butterfly ヴェルマ・グラッチととってもすてきなちょうちょう

絵本好き冥利に尽きる絵本はそうそう出会えるものではないのだけれど、『Velma Gratch and the Way Cool Butterfly』は確かにこのカテゴリーに入る一冊だ。表紙のヴェルマちゃんとミルクウィード・バタフライ(オオカバマダラ)の組み合わせだけで、ただ者な…

At Night 都会の夜に吹く風は……

眠れない夜、甘い夜風に誘われて女の子は屋上に向かった。枕とブランケットを運び出し、まろやかな月光に包まれて椅子のベッドに寝そべれば、世界は安らぎに満ちていた。古いレンガ作りのその建物は、対岸に摩天楼を臨む港の一角にある。おかあさんといっし…

Heat Wave 南部の夏を描く絵本

今年の真夏日はいつだったっけ。さわやかなシアトルの夏に慣れてしまうと、『Heat Wave』で描かれるような猛暑がちょっと恋しくなったりする。うだる暑さを克服しようと、ぬれたハンカチを首に巻いたり、氷を片時も離さなかったり、夏ってこうやって過ごすも…

Pictures from Our Vacation うちの夏休みに似ている

『Pictures from Our Vacation』に描かれる夏休みの光景は、うちのと似ているので親近感を抱く。つまり「家族を訪ね、自然を満喫する」系のバケーション。といっても大陸横断が必要なほど遠方に家族はなく、テキサス州を除けば皆ワシントン州内に住んでいる…

Nini Here and There ねこのニニ

『Nini Here And There』に出てくる猫のニニは、うちのデュークにそっくり。たぶんデュークのほうが大きいと思うけれど、ぶすっとした仏頂面がタビ猫そのもので愛着を感じてしまった。 タビ猫って、ここでは「旅猫」とも表せるかも。絵本では、休暇に連れて…

Today at the Blue-Bird Cafe: A Branchful of Birds 本日のブルーバードカフェは……

『Today at the Bluebird Cafe』は、夏に読むのが最高の、鳥たちを主人公にした詩の絵本。タイトルを聴いただけで、すでににぎやかなさえずりが流れてきそう。本当に今の季節にお似合いだ。 登場するのは、「ブルーバード、アビ、カージナル、ワシ、キツツキ…

How to Bake an American Pie 米国の理想を詰め込んだ絵本

『How to Bake an American Pie』は、米国建国の理想をパイ作りに込めた絵本です。いちごとブルーベリーを盛り付け星条旗をあしらったパイは米国7月4日の風物詩ですが、絵本の中で猫ちゃんと犬くんの焼くパイはこういった普通のパイではありません。北米の…

Mrs. Spitzer's Garden さあ、園芸の季節だよ!

どこかでおすすめになっていたので、『Mrs. Spitzer's Garden: [Gift Edition]』を読みました。(偶然にも先日読んだ『Fred Stays With Me!』*1と同じ画家です。)夏休みを迎え、庭仕事にいそしむスピッツァー先生の姿が描かれます。ただそれだけですが、気…

A Sea-Wishing Day 海に出かけたいなあ

行水用プールで海に夢をはせて遊んでいるうちに、海賊やモンスターが現れた。『A Sea-Wishing Day』では、都会の片隅に住む男の子が広い大海原で大冒険を繰り替えす。 イラストの色重ねが魅力。登場キャラクターよりも、背景に描かれる海や波の「色」に魅せ…

Water Boy 水に魅せられた空想の旅

人間の体はほとんどが「水」でできている。学校でそう習った男の子は、「水」に対してさまざまな想像を働かせた。「雨の中だと、いっしょに水になって流れていっちゃうのかな」「雪だるまといっしょに凍っちゃうのかな」「猫にひっかかれたら、そこから水が…

On Meadowview Street メドービュー・ストリートのおうち

一見、表紙から『On Meadowview Street』のよさはわからないだろうなあ……というのが第一印象。米国の画一的な宅地開発にさらりと触れて、小さな庭作りから広がった生態系を賛歌する秀作絵本だった。 新しい家に引っ越してきたキャロラインは、住所が「メドー…

I'm The Biggest Thing in the Ocean でっかいイカくんものがたり

いつだっただろう。息子が生物の時間にイカの解剖をやったとかで、イカに夢中になっていたときがある。その先生は釣りが大好きで、当日の実験用イカもピュージェット湾で釣ってきたのだそうだ。残ったイカをどうやって調理したかは知らないが生徒たちに振舞…

Ghost Ship 潮風に吹かれ歴史をひもとけば……

『Ghost Ship』は、久々に息子と読んだ絵本。 トーマス・フレミングは夏になると、ケープ・コッドの祖母の家で休暇を過ごす。築後200年以上を経た家は海岸沿いに立ち、その昔土地の名士でもあったアンドリュー・ハレット船長が所有していた。ある日、砂浜で…

Secret in the Garden 母の日にお庭の絵本

母の日の朝は、ライラックの香り――テーブルの上に薄紫色のライラックと黄色いペーパーフラワーが飾られ、娘の詩と手作りカード*1が置かれていた。そのかたわらには、バタースポンジケーキとダークチョコレート。子どもたちがお小遣いをはたいて、わたしの好…

サリーのこけももつみ

『サリーのこけももつみ (大型絵本)』で、ブルーベリーの実がブリキのバケツに跳ねる音。「ポリン、ポロン、ポルン」が、英語ではどんな音なのか。なんとなく想像できたけれど、実際確かめてみたくて、フリーブックのイベントで『Blueberries for Sal (Pictu…

わたしとあそんで

ミルク色の日差しが、やさしいなあ。『わたしとあそんで (世界傑作絵本シリーズ)』(原書『Play with Me (Picture Puffins)』)のやわらかい色調に触れたとき、絵本を手に取るだけで干草の芳しい陽だまりにたたずんでいる気持ちがした。こうして、小動物たち…

ぞうくんのさんぽ

絵本『ぞうくんのさんぽ』の表紙。図体の大きな動物たちが、それぞれ上に乗り合って、いったい何が起きるのか。まるでプラスチックのお人形さんみたいな形をしたゾウさんたちが、うれしそうな顔でのんきな反応をして。いいよね、こういう時間の流れ方。最後…

ひとあし ひとあし

毎朝目が覚めると、きつつきの木を突く音が聞こえる。ここ最近、「また、お仕事しているね」が娘のお決まりのひとこと。とくに朝と夕方、このきつつきは森に響くいい音を聞かせてくれる。数にしてみると、一秒間に「こつ」の音が9回ぐらいかな。「こつこつ…

Rainstorm さわやかな夏に読みたい文字なし絵本

文字なし絵本『The Red Book (Caldecott Honor Book)』*1を冬、『Museum Trip』*2を秋に読むとしたら、リーマンの最新作『Rainstorm』は断然、さわやかな夏になります。暗雲たれこめた表紙のイメージとは少々対照的ですが、まずはここに見える窓にご注目を。…

かたつむりハウス

摘みたて苺をほおばる息子と『かたつむりハウス (児童図書館・絵本の部屋)』(原書『The Snail House』)を読みました。冒頭がちょうど、苺摘みから戻る場面なので、これはぴったりです。娘も誘いましたが、「この絵本、日本で読んだ」とのこと――そういえば…

Pirates Don't Change Diapers 海賊たちが帰ってきた!

『Pirates Don't Change Diapers』の表紙を見て、あの海賊たちのことが気になり出した。今度は、子守り! 船首が壊れてしまい修理が必要になった船長たち。ジェイコップの家を訪ね、以前いっしょに埋めた宝物から修理費用をまかなおうとした。でも、ジェイコ…

おいてきぼりのジョー

今夜の絵本は『おいてきぼりのジョー』(原書『A Remainder of One』)です。小さな虫25隊員から成るジョーの兵団が行進していきます。2列×12隊員で、ジョー1匹だけが余ってしまいました。じゃあ、3列×8隊員は? 4列×6隊員は? いずれもジョーが余ってしまい…

3びきのかわいいオオカミ

息子のお気に入り絵本『3びきのかわいいオオカミ』(原書『Three Little Wolves and the Big Bad Pig』)を、宿題を終えた彼といっしょに読みました。 3匹のコブタがかわいいオオカミ3兄弟に、悪役オオカミは憎憎しげな大ブタに――というユーモラスな役割…

Houndsley and Catina ハウンズリーとキャティーナ 絵本のような小さなお話シリーズ

ゼルダとアイビー姉妹*1に続き、打ちのめされてしまったのが『Houndsley and Catina』だった。シリーズテーマは、フレンドシップ。友だちのシンボルともいえるがまくんとかえるくん*2は、たとえば部屋の片隅など永遠に「そこ」にいて、わたしたちを見守って…

A Drop of Water 一滴の水

男の子がせせらぎで、指からしたたる一滴の雫を見つめている。ここから視点はどんどん上昇し、雨粒、せせらぎの流れ、池、滝を見渡すほどになる。ここまでくると、まるで悠々と弧を描く鷲になったかのような気分。鹿、ビーバー、ムースなど動物たちの生息地…

The Runaway Dinner ごちそう にげた 

子どもは、食べ物のお話が大好きである。ストーリーは平坦でも、食事風景や好きな食べ物が出てくるだけで何だか夢中になっている。「食べたくなっちゃった」とか言いながら。ご多分にもれず、『The Runaway Dinner』もそうだった。 男の子が食べようとした夕…

Butterfly Eyes and Other Secrets of the Meadow のはらのひみつ ちいさないきもののうた

詩+遊び+科学=『Butterfly Eyes and Other Secrets of the Meadow』。本作品は同じ趣向の前作『Song of the Water Boatman and Other Pond Poems (Bccb Blue Ribbon Nonfiction Book Award (Awards))』*1と比べ、小さな子ども向けに一段と遊び心の加味さ…

The Cow Who Clucked コッココッコとないたうし

鳴き声をなくした牛を描く絵本『The Cow Who Clucked』を読み、あらためてこの作家の底力を感じた。単純なのだが子どもの好きなものばかり登場し、いつの間にか心が牧草地に飛んでいた。 舞台は、夏の農場。朝起きて「コッコ」と鳴いた牛は、自分の「モー」…

Baby Shoes あかちゃん おさんぽ!

赤ちゃんの小さな靴には、まだ見ぬ夢がたくさん詰まっている。この真っ白な靴をはいて、赤ちゃんはどこまで歩いていくのだろう――。親であればきっと誰もが感慨にふけるこの気持ちを、絵本『Baby Shoes』を読んでしみじみと思い出した。歩き始めた頃の赤ちゃ…

ONCE UPON A BANANA バナナが1本ありました

絵本の題名『Once Upon a Banana』を劇場の公演タイトルとかけ合わせ、ダウンタウンの一角に巻き起こる愉快なできごとを描く文章のない絵本。文章がないからと、侮ることなかれ。文字以上に絵と構成が、ストーリーを巧みに物語っている。 表紙には、大道芸人…